6.検定教科書と教育勅語

 明治10年代に入り、民間の自由民権運動が高揚をみせると、明治政府はこれを抑圧するとともに、教育においてもそれまでの欧化主義的な方針を改めた。明治13年の教育令改正に際し、仁義忠孝を中心に据えた儒教色の濃い道徳教育を復活し、修身(道徳)を筆頭教科に定めた。同年に文部省が出版した『小学修身訓』や、明治15年に勅令によって編まれた『幼学綱要』は、その後の修身の教科書の規範となった。また、それまで自由な発行と採択が認められていた各教科の教科書についても制約が加えられ、明治19年からは文部省による教科書の検定制度が導入された。
 明治22年の「大日本帝国憲法」の発布により、天皇を中心とした国家統治の大綱が示され、翌23年には、その精神を教育に反映した「教育勅語」(教育に関する勅語)が下付された。以降、第2次世界大戦後の昭和20年まで、この勅語を奉じ、尊王愛国を理念とした教育体制が続き、教育のみならず、国民生活全般にわたって大きな影響を及ぼした。


1)修身教科書


6-1 「小学修身訓」西村茂樹(宮ヘ000-1105) 所蔵情報

東西の名言、格言等を収める。仁義忠孝を中心とした東洋道徳を復活する目的で編まれた代表的な修身教科書。2巻2冊、明治13年刊。


6-2 「幼学綱要」元田永孚(宮ロ580-749) 所蔵情報

明治12年の教学大旨の精神に基づく修身教科書。宮内省より刊行され、全国の学校に頒賜された。挿絵を描いた松本楓古は茨城県出身の日本画家。


2)検定教科書


6-3 「読書入門」(宮ヘ000-921) 所蔵情報

「よみかきにゅうもん」。検定教科書制度を実施するにあたり、文部省が規範として編んだ国語学習入門の教科書。入学して半年間、まずこの教科書に親しみ、第1学年の後期から次の「尋常小学読本」を学んだ。明治19年刊。


6-4 「尋常小学読本」(宮ヘ000-924) 所蔵情報

「読書入門」に続き、第1学年後期から第4学年までの国語教科書。各学年2冊。巻1は口語だが巻2より文語となる。漢字2000字が難易度順に使用された。明治20年刊。


6-5 「高等小学読本」(宮ヘ000-927) 所蔵情報

4年間各2冊ずつ全8冊。挿絵は生巧館の木口木版画。内容は実学を中心に広範に及び、合理的で簡潔な記述になっている。明治21-22年刊。


3)教育勅語解説書

 明治23年に教育勅語が発布されると、これに述べられた徳目に従い修身教育が行われた。教科書として使われた井上哲次郎の「勅語衍義」のほか、民間でも多くの勅語の解説書が出版された。


6-6 「勅語衍義」井上哲次郎(ホ000-167) 所蔵情報


6-7 「教育勅語衍義」今泉定介(宮ホ000-233) 所蔵情報


6-8 「聖諭訓義」関口隆正(宮ホ000-251) 所蔵情報


6-9 「聖諭述義」生田目経徳(宮ホ000-252) 所蔵情報


6-10「奉読用勅語通解」渡辺武助(宮ホ000-253) 所蔵情報


6-11「勅諭修身経詳解」末松謙澄(宮ホ000-254) 所蔵情報


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