御挨拶

 このたび筑波大学附属図書館では、初めての学外蔵書資料展示会として、特別展「明治のいぶきー黎明期の近代教育・幻灯・錦絵・教科書」を開催いたします。
 これは昨年、北原前附属図書館長のときに、11月3日の文化の日を中心に、つくば市の本学附属図書館貴重書展示室において実施した特別展「幕末・明治の生活と教育」が大変好評で、その折、このような資料をより広く多数の人々に見せて欲しいという、学内外の希望が強く寄せられたことに応えるために企画したものです。
 明治5年に始まる義務教育の施行は、すべての国民を対象に初等教育を行い、それまで教育にめぐまれなかった人々に、あまねく学習機会を提供することに成功しました。近年の生涯学習社会では、それぞれの人がそれぞれのライフサイクルのなかで、自由に学習機会を選択することが可能になりつつあります。歴史の転換期に、貪欲に新しい考えを取り込んだ明治初期の息吹には、教育や学習の意義が問い直され、生涯教育が求められる現代、大いに触発されるものがあります。本学では、明治6年に本学の前身である師範学校が開設されて以来、教育に関する多くの図書資料の収集に努めてきました。今回の展示では、明治初頭の学校教育をテーマとし、明治5年学制施行から明治23年頃までの資料200 点を展示します。とりわけ文明開化期の、覇気に富み、自由・闊達に行われた教育の様子を、当時使われた教育錦絵・教育絵図・双六などの教材をとおし、ご覧いただければと思っております。本展が、ひとりでも多くの方々の目に触れ、生活のなかで学習の意義を問い直す、ささやかなきっかけとなれば幸いです。

平成9年8月

筑波大学附属図書館長
 斎 藤  武 生 


前のページに戻る