ATS(Academic Text Service)
ATS はジム・コールマン(Jim Coleman)という人が
行なっているプロジェクトで、Oxford English Dictionary や
シェークスピア、オースチン、ジョイスなどの文学作品を Macintosh 上の
ソフトウェアを通して学生・教職員に提供している
(スタンフォードの端末はほとんどが Macintosh である)。
WWW によるサービスも行なわれている。また、
図書館のコレクションである昔の大衆小説(Dime novels) を電子化する計画も
進行中だった。
コールマン氏のオフィスはスイート・ホール(Sweet Hall)というコンピュータ
関係の部署が集まった建物の一室にある。図書館とコンピュータ・サービス
は組織上は一体だそうで(Stanford University Libraries and Academic
Information Resources(SUL/AIR) と称されている)、この日も私との面会の
後は会議か何かでグリーン図書館に行かなければならないとのこと。
私もちょうど次の約束がこのグリーン図書館の人だったので案内してもらった。
Folio
スタンフォード大学のメイン・ライブラリであるグリーン図書館
(写真1)では
レファレンス・ライブラリアンのディック・フィッチェン
(Dick Fitchen)氏に電子的な情報サービスについてお話を伺った。
スタンフォード大学では、Folio という統合的な検索システ
ムにより 100 以上のデータベースを学生・教職員に提供している。学内の各
図書館には Folio に接続された利用者用端末が備えてある他、 telnet によ
りインターネットに接続されたどのコンピュータからでも利用ができる。
Folio を構成するデータベースはさまざまで、蔵書目録(Socrates)やCD-ROM
を含む学内のデータベースばかりでなく、MELVYL のような他大学のデータベー
スや CAS Online のような商業データベースもある。こうしたさまざまなデー
タベースができる限り同じコマンドで検索できるようになっている。見栄えの
いい GUI(Graphical User Interface) ではなく文字ベースのインターフェー
スで、学外のデータベースや CD-ROM では固有の検索ソフトが起動するためそ
れぞれ使い方を覚えなければいけないが、とにかく一つのメニューから選択で
きるだけでも便利だし、それより何より利用できるデータベースの質と量に圧
倒される。なお、学外者でもスタンフォードの蔵書目録(Socrates)は検索でき
る。
HighWire Press
スタンフォードの図書館にはまた、HighWire Press というプロジェク
トもある。このプロジェクトを担当しているヴィッキー・ラ
イク(Vicky Reich) 女史にグリーン図書館の彼女のオフィスで話を聞いた。
これは WWW 上で学術雑誌の電子版を提供するもので、1996年6月現
在、米国生化学分子生物学会(American Society for Biochemistry and
Molecular Biology) の JBC(Journal of Biological Chemistry) が、1995年4
月以来の無料体験期間を終了して、有料サービスに入っている。こうなるとも
はや図書館は完全に出版社の役割を果たしていると言ってよい。出版社との競
合が気になるところではある。実際、ライク女史自身きっぱりと、自分は
出版社と同じ仕事をしているんだと言い切っている。
彼女によれば、「彼ら(営利出版社の人たち)はわれわれを嫌っている」
そうである。
マイヤー図書館
グリーン図書館の向かいにあるマイヤー図書館(Meyer Library)
(写真2)は、マルチ
メディアの一大拠点である。まず目を引いたのが、サイバーキャンパス
(CyberCampus)と大きな看板を掲げたゲーム機のようなマシン
(写真3)、
(写真4)。
学生が自由に使える端末を多数並べたコーナー
(Meyer Computer Cluster
-- 写真5)はもちろん、
ビデオや CD-ROM を閲覧できるメディアセンター
(Meyer Library Media Center -- 写真6)、
学生や教職員がマルチメディア作品を作成できるように、
ビデオ編集システムやスキャナーを備えたマルチメディア・スタジオ
(Meyer Multimedia Studio -- 写真7)、
パソコンに接続された電子楽器も取り揃えたコーナー
(MIDI Computer Studio -- 写真8)まで用意している。
また、 Flexible class-lab という新しいセミナー室は、
定まった家具の配置がなく、利用者が台形の小さな机を好きな数だけ好きな形
に並べて使うようになっている。カラフルで大きなビーンバッグ
(クッション)も置いてあり、そこに寝そべってもいい。もちろんノート・パ
ソコンをつないでネットワークにアクセスできる情報コンセントも設けてある
(写真9)。
自由な発想を育てるための雰囲気作りということであるが、日本の大学図書館
ではなかなかできないことではないだろうか。
中を一通り見学した後、チャールズ・カーンズ(Charles Kerns)に
ここでマルチメディア機器を使って学生がさまざまな研究をしている
といった話をうかがう。
フーヴァー研究所東アジア・コレクション
フーヴァー研究所(Hoover Institution on War, Revolution and Peace)は、
哺乳瓶のような形をしたフーヴァー・タワー(Hoover Tower)、
ルー・ヘンリー・フーヴァー・ビル(Lou Henry Hoover Bldg.)、フーヴァー
記念館(Hoover Memorial Bldg.)の三つの建物から成り、20世紀の政治、経済、
社会に関する貴重な資料を多数収蔵している。
東アジア・コレクションはルー・ヘンリー・フーヴァー・ビルにあり、
第2次世界大戦直後から中国、日本に関する資料を体系的に集めている。
日本人司書の小竹直美・フィンドリーさんに館内を案内してもらった。
参考図書や最新の雑誌、新聞を除いて
資料の大部分は地下の書庫に収めてあり、一般の利用者はカウンターで出納し
てもらわなくてはならない。
目録は 1983年以前はカード目録、1984年以降はオンライン目録。スタンフォー
ド大学のオンライン目録 SOCRATES はローマ字しか表示できないが、RLIN の
CJK 端末により、漢字データも見ることができる。
U.S.-Japan Technology Management Center
米日技術経営研究センター(U.S.-Japan Technology Management Center) では、
センターのホームページの他に
日本の NTT と共同で
Japan Windowという WWW サーバを
立ち上げ、日本情報を発信している。
このプロジェクトを管理しているのはバートン・リー(Burton Lee)という青年で、
山崎さんという日本人女性が WWW & Information Development Coordinator
という肩書でホームページ作
成に携わっていた(桃太郎の
ページなど)。サーバ自体は小さな研究室に置かれた Sun のワーク
ステーションで、ささやかな情報発信基地という印象だった。