教員著作紹介コメント(前川啓治先生)

ブックコメントのアイコン前川啓治先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『カルチュラル・インターフェースの人類学 : 「読み換え」から「書き換え」の実践へ』前川啓治編.新曜社 , 2012.8【分類389.04-Ma27】

【コメント】
 人類学の成果は百花繚乱という様相を呈している。まさにポスト・モダンといわれる知の状況に呼応して、人類学は多様になってきている。人類学がなんでもありの学問になってゆくのか、人類学のスピリットとでもいうべきものを維持し、そのなかから発展的に対象を拡げ、対象を深め、時代状況に応じた展開を目指してゆくのか、まさにその岐路に立っている。
 自省することは人類学者の重要な能力の一つであるが、オリエンタリズム批判以降の人類学の一部は、問いを民族誌における表象の問題に矮小化してきた。その結果が、民族誌の書き方という特定化された問題になってしまった。「ライティング・カルチャー・ショック」というものは、民族誌の表象という限定された範囲における根本的な見直しではあるが、それはあくまでフィールドから理論に至るまでの人類学の実践の一部にすぎない。(フィールドワークの実践においてこそ、われわれは自省しなければならないのではないか。)
 人類学者が一般的に嫌うのは、超越的な視点である。なぜなら、権威や権力がその背景に付随してくるからである。*超越的*な立場からの批評ではなく、葛藤を含む現実のインターフェースの絡み合いのなかで、*超越論的*な取り組みによって、つまり同時に内と外に位置するところから、同時に他者構築と自己構築を行なってゆくことこそが、人類学者の原実践である。
 本書の各章で展開された諸論は、いずれも現代の人類学の主要なテーマを取り扱っており、今後のアプローチの方向を示している。
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*目次

*はじめに ― 文化の構築とインターフェースの再帰性 前川啓治

* Ⅰ部 「読み換え」から「書き換え」への実践Ⅰ ― エリートの表象を超えて*
1章 ニューギニア高地における白人性の獲得
― 脱植民地期におけるキリスト教の実践 深川宏樹
2章 文化接合としてのミメシス
― ソロモン諸島の宗教運動にみる正統性の希求 石森大知
3章 一義化と両義性から考える仏教徒たちの歴史と視点
― 現代インドにおける改宗運動とマルバット供犠 根本 達

* Ⅱ部 「読み換え」から「書き換え」への実践Ⅱ ― 民族カテゴリーを超えて*
4章 カテゴリーの成員性
―「外国人」と名づけられた生徒たちの名乗り 井上央子
5章 アイヌ民族と共生/連帯する人びと 関口由彦

* Ⅲ部 「読み換え」/「書き換え」の実践へ ― 開発の枠組みを横断する*
6章 援助機関文化と人類学のインターフェース
― ある開発援助事業から人類学のあり方を考える 真崎克彦
7章 「まちづくり」的感性のつくられ方
― 地域ブランド商品の開発プロジェクトを事例として 早川 公

* Ⅳ部 展開 ―「情報」としての文化へ*
8章 民俗儀礼の示標性と文化変容
― 白鳥地区古式祭礼をめぐって 松田俊介
9章 薬剤と顕微鏡
― ガーナ南部における疾病概念とモノの布置 浜田明範
10章 食肉産業にみる商品の感覚価値
― 沖縄における豚肉の均質化と差異化 比嘉理麻
11章 文化接触の場としての労働空間
― 在トンガ王国日系企業の事例から 北原卓也


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