Monthly Archives: 12月 2015

Readingバトン(徳永 幸彦 生命環境系准教授)

Readingバトン
徳永先生

Readingバトン-教員から筑波大生へのmessage-
山田(前)学長波多野(前)館長吉武先生中山館長秋山先生渡辺先生五十嵐先生森先生野村先生松本先生永田学長池田先生守屋先生佐藤先生外山先生唐木先生青木先生梅村先生関根先生稲葉先生谷口先生寺門先生和田先生に続く第24走者として、徳永 幸彦 生命環境系准教授から寄稿いただきました。



偶然の科学
Pick Up

『偶然の科学』ダンカン・ワッツ著 ; 青木創訳. 早川書房, 2012.1【301.6-W49】

Book Review
 科学的説明からは、歴史的側面は極力排除すべきことになっている。しかしながら、この歴史性の魅力に我慢できなくて、前世紀に1本だけ、この言葉をタイトルに含んだ理論論文を書いた。結果は散々で、10年余りの間、誰からも引用されなかった。しかし、2000年を越えた辺りから、ぽろぽろと引用が始まった。

 何故、目の前の現象が起こっているのか、科学者でなくても人々は何がしかの説明を試みる。しかしながら著者のワッツは、「モナ・リザが人々を魅了するのは、モナ・リザが芸術的に優れているものを持っているからではなく、人々が魅了されるようになったからである」という解釈を投げかける。我々の善悪や公平、優劣の判断は絶対的なものではなく、文脈や歴史、社会的環境が偶然に規定した制約の中で、これまた偶然に決まっていると解釈する。いや、偶然に決まっているという観方をまず受け入れてから、その上で科学的推論や解釈を試みることを推奨している。

一見非科学的にもみえるこの姿勢は、ネットワーク科学を駆使した実験に裏打ちされた主張でもある。そのネットワーク科学にはびこる常識にも、著者は懐疑的である。例えば、ネットワークの中において、スーパースプレッダーやインフルエンサーだと考えられる「特別な存在」の影響は、思ったよりも小さい。だから、ネットワークのアウトプットに対する妥当な予測を得たいならば、反常識を培い、実験をしかけ、測定不可能と思っていることを測定するべきであると主張している。

 世の中ネットワークだらけである。この本は、様々なネットワークの柵を紐解くためのヒントを、そして何よりも覚悟を与えてくれる。私も、自分の歴史性についての論文の引用が、近年突然始まったのは何故か、反常識を駆使して詮索してみようと思う。

■次回の更新は1月中旬を予定しています。


教員著作紹介コメント(平山朝治先生)

ブックコメントのアイコン平山朝治先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『憲法70年の真実(平山朝治著作集:第6巻)』平山朝治著. 中央経済社, 215.12【分類308-H69-6】

【コメント】
 憲法の解釈や改正をめぐる無益な論争を避け、国民的合意を形成するために、憲法の成立や解釈の歴史をひもとき、国民が共有すべき真実を明らかにする。

<目次>
イントロダクション

1章 憲法解釈と安保法
 1 安保法案 こう考える
 2 歴史から忘れられた憲法第九条成立の趣旨
 3 安保法成立に際して
2章 集団的自衛権を巡る憲法論争の再検討
 はじめに:しろうとには理解困難で、国際法とは異なる、日本政府の集団的自衛権
 1 「憲法に軍規定がないので違憲」論は不成立
 2 一九五四年下田武三外務省条約局長の集団的自衛権行使不可能論は、禁止ではなく事実判断
 3 一九六〇年岸信介内閣:根拠を示さぬ海外派兵違憲論で安保ただ乗り
 4 「戦力」の定義から集団的自衛権違憲判断を導いた1972年参議院決算委員会提出資料
 5 コスト最小化の必要条件として集団的自衛権違憲を正当化した1981年衆議院答弁書
 6 二〇〇四年衆議院予算委員会:七二年・八一年政府見解を誤解した秋山收内閣法制局長官答弁
 7 世の中を覆い尽くすマスコミの誤報
 8 二〇一四年七月一日の閣議決定は七二年と八一年の政府見解の確認にすぎない
 9 違憲の疑いがある立法は避けるべきか?
 おわりに:自衛権は自然消滅すべきもの
3章 日本国憲法の平和主義と、安全保障戦略
 はじめに
 1 憲法第九条の立法趣旨とその封印
  (1)マッカーサーの真意
  (2)曲解された吉田茂答弁
  (3)芦田均修正の真相
  (4)芦田のタン学説剽窃疑惑
  (5)宮沢俊義のプログラム規定説提唱と、高柳賢三の剽窃疑惑
  (6)高柳の死と宮沢の再提唱
 2 戦後日本における非武装戦略のゲーム理論的分析
  (1)集団安全保障の効果
  (2)冷戦・序:山川均の日本真空化論
  (3)冷戦・破:割れる国論
  (4)冷戦・急:集団的自衛権違憲論で安保ただ乗り
  (5)冷戦・後:非武装平和主義の共産化と劣化
 3 結論
 追記

あとがき


教員著作紹介コメント(齊藤泰嘉先生)

ブックコメントのアイコン齊藤泰嘉先生(芸術系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『佐藤慶太郎 : 東京都美術館生みの親』齊藤泰嘉著. 東京都美術館, 2012.4【分類706.9-To46】

【コメント】
 本書は、2012(平成24)年、東京都美術館リニューアルオープンを記念して刊行された冊子です。北九州若松で「石炭の神様」と呼ばれた実業家佐藤慶太郎(石炭商、炭鉱経営者)は、大正時代に美術館建設費100万円(現在の約33億円)を東京府に寄付し、岡倉天心らの「美術館が欲しい」という明治以来の悲願をかなえた芸術支援の人です。
 1926・大正15年に誕生した「東京府美術館(現東京都美術館)」は、「上野の美術館」として親しまれ、心華やぐ美の殿堂となります。佐藤慶太郎の播いた一粒の種が、大きな樹となり、森となり、日本の美術界の今があるのです。
 佐藤慶太郎は、「人富みて死す、その死や恥辱」(アメリカの篤志家カーネギーの言葉)に共鳴し、「日本のカーネギー」たらんと「公私一如」の信念を持ち続けました。彼は、自分の財産は、社会からの預かりものであり、世の中にお返しするのは当たり前のことだと考え、美術館建設費も含め150億円に及ぶ社会奉仕を実践しました。本書を通じて佐藤慶太郎の生き方を学んでいただければ幸いです。


教員著作紹介コメント(山本芳嗣先生)

ブックコメントのアイコン山本芳嗣先生(システム情報系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『集合・数列・級数・微積分(基礎数学:1)』山本芳嗣, 住田潮著. 東京化学同人, 2015.9【分類410-Ki59-1】
『多変数関数の微積分(基礎数学:2)』山本芳嗣著. 東京化学同人, 2015.11【分類410-Ki59-2】

【コメント】
基礎数学 I と II は理工学を志す学生が心得ておくべき解析の基礎を書いたものです.
I の前半では集合,写像,数,数列等の基礎に加えて母関数を解説しています.確率や統計を学ぶ際にも役立つと思います.I の後半は理工学の基礎となる1変数の微積分に充てられています.連続性の章では関数の振幅という概念が鍵となります.対数関数の導入,ロピタルの定理の証明,局所テイラーの定理とテイラー級数の収束等の議論に意を用いました.
II は多変数関数の微積分です.多変数関数の極限,連続性の説明には多くの例を示し,重積分の説明はジョルダン可測性を意識して書きました.本学の理工学を学ぶ学生諸君の助けになれば幸いです.