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資料紹介

公共図書館関係の本10選

薬袋秀樹

公共図書館一般に関する基本的な図書を紹介したい.

  1. 「イギリスの公共図書館」T・ケリー,E・ケリー著,原田勝,常盤繁訳,東京 大学出版会,1983,286p.[016.23:Ke-33]
     著者は英国の図書館研究の第一人者で,前史から1970年代前半までの英国公共図書 館の発展の歴史をわかりやすく具体的にまとめ,発展のポイントを的確に解説してい る.
  2. 「公共図書館の運営原理」バーナ・L・パントジア著,根本彰ほか訳,勁草書房, 1993,256p.[011:P-96]
     現在米国公共図書館界において行われている公共図書館に関する論議の論点を整理 したもので,わが国公共図書館に将来の課題を示唆するものである.
  3. 「われらの図書館」前川恒雄著,筑摩書房,1987,256p.[010:Ma-27]
     著者は1960-1980年代の公共図書館のリーダーで,公共図書館についてわかりやす く論じており,著者の情熱と人柄がうかがえる.学術書ではないが入門書に適してい る.
  4. 「公共図書館」森耕一著,雄山閣出版,1976,268p.(日本図書館学講座) [010.8:N-77:4]
     内容はいかにも古いが,とかく偏りがちな日本と海外の理論をバランスよく,もれ なくまとめている.
  5. 「公共図書館の歴史と現在」森耕一著,日本図書館協会,1986,317p. [016.2:Mo-45]
     英・米・日本の公共図書館に関する研究論文を集めたもので,4の各論にあたる.
  6. 「戦後公共図書館の歩み 公共図書館白書1980」日本図書館協会,1980,56p. [010.59:N-77:1980]
     敗戦から1970年代末までの公共図書館史を簡潔にまとめている.レファレンス・ サービスと職員問題以外は評価は適切である.
  7. 「有山松(注)」前川恒雄編,日本図書館協会,1990,234p,(個人別図書館論 選集)[010.4:A-78]
     1960年代公共図書館の発展の真のリーダーであった有山の著作選集である.短いが 著者の洞察力と構想力がうかがえる文章が多い.
  8. 「中小都市における公共図書館の運営」日本図書館協会,1963,217p. [016.21:M-77]
     中小都市の公共図書館に関する現状分析と運営指針からなり,1960年前後の低迷か ら脱出し発展する契機となった.「中小レポート」の通称で知られている.
  9. 「市民の図書館」増補版,日本図書館協会,1976,168p.[016.21:Sh-48]
     「中小レポート」を受け,市立図書館の運営指針を示した小冊子で,1970-1980年 代の図書館活動をリードしたものである.小冊子のため内容を正確に理解することは 以外と難しい.
  10. 「効率図書館の任務と目標 解説」日本図書館協会図書館政策特別委員会編,日 本図書館協会,1989,69p.[016.2:N-77]
     1970年以後の理論的成果を集約し,公共図書館全般の指針を示したものである.町 村立図書館から都道府県立図書館,都道府県図書館行政までを初めて網羅的に取り上 げている.

 評価の定まったものを選んだため,歴史的性格の強いものが多くなったことをお断 りしておきたい.なお,上記の図書を含め,公共図書館の専門職員に関しては,運動 論的傾向が強く不十分な文献が多い.現在,再検討が進められているところである.

注: 本来の字は「やまかんむりに松」


本学・教授
Ten Selected Books on Public Libraries, by Hideki Minai