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ILLシステムについて

大澤類里佐・下坂明子

 図書館間相互利用(=Inter-library Loan:ILL )とは、図書館間で貸出、複写を行うことによりに自館にない資料を利用者に提供するサービスです。この項では、平成4年4月から運用開始され本学も当初から参加している、学術情報センター(National Center for Science Information System)のNACSIS-ILLシステムについて述べます。

 NACSIS-ILLは図書館間相互利用における所在調査と通信・連絡の部分を電算化したもので、平成6年5月現在、NACSIS目録システムの参加館の約93%にあたる304の大学図書館等が参加しています。

 このシステムでは依頼館側はまず総合目録データベースを検索して所在調査を行い、ヒットした所蔵館の中から依頼先を選択、オンラインで依頼します。依頼候補館を複数指定できる機能があるため、第一候補館に断られてもすぐに次候補館にデータが転送されるので、申込みしなおすことがほとんどなくなり、郵送申込みに比べて所要時間が大幅に短縮されました。

 一方、受付館側はオンラインで送られてきたデータから所蔵を調べ、複写あるいは貸出を行います。通常、資料のやりとりは郵送で行われています。受付館側にとってILL件数の増加は、複写や発送手続などの作業量の増加を意味しています。特に、所蔵の多い大規模館や遡及入力の進んだ館へ依頼が集中し、負担が大きいとの声もあがっています。

 下図は文献複写、相互貸借の年度ごとの推移です。平成4年度のシステム運用開始後は非常に高い伸び率を示しています。特に目録データの遡及入力により図書の貸出件数は著しく伸びています。

 平成5年度の図書館間相互利用(貸借、複写をあわせた全件)のうちNACSIS-ILLによるものが84.6%でした。システム未参加の国会図書館への依頼を除けばこの率はもっと高まります。

 本学から他館へシステムを使って相互利用の依頼をすると、相手館にもよりますが、だいたい1週間程度で資料が到着しています。また、本学に対して他館から申込があった場合には、できるだけ当日又は翌日中に処理するよう努力しています。

参考文献
 甲斐重武「学術情報センターILLシステムの利用状況と図書館協力」大学図書館研究 no.41 (1993) p.1-16
 甲斐重武「ILLシステムによる資料評価」, 情報の科学と技術 v.43 no.11 (1993) p.986-995
「第6回国立大学図書館協議会シンポジウム報告」大学図書館研究 no.43 (1994) p.85-95


The present of ILL-system Rurisa Osawa, Akiko Shimosaka
情報奉仕係