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ターミノロジー37

官庁統計

岸田和明

 官庁統計は,主として政府や関係省庁が行政上の必要性から作成した統計であり,そのデータ収集方法や調査方法,法的根拠などによって,いくつかのグループに分けることができる.

 まず,第1義統計と第2義統計との区別がある.第1義統計は,統計の作成を目的とした調査を特に行うことにより作られるものであり,それに対して,第2義統計とは,特別な調査は行わずに,日常的な義務を通じて作成される統計を指す.第2義統計は業務統計とも呼ばれ,『人口動態統計』や『税務統計』などがこれにあたる.その他,これらの統計を加工して,何らかの集計量や指数を算出した加工統計(第2次統計ともいう)がある.これには『国民経済計算』や『消費者物価指数』などが該当する.つまり,GNPや物価指数などの経済指標は,ひとつの加工統計として算出された数値といえる.

 統計調査が行われる場合は,全数調査(悉皆調査)と標本調査とに区分できる.日本における代表的な全数調査としては,『国勢調査』,『事業所統計調査』,『工業統計調査』,『商業統計』,『農林業センサス』,『漁業センサス』などがある.これらの全数調査はさらに,標本調査のための抽出枠としての機能を果たすという点でも重要である.例えば,各世帯の家計を調査する『家計調査』は母集団情報として『国勢調査』の結果を用いているし,労働者等の賃金を調査する『賃金構造基本統計調査』の抽出枠は『事業所統計調査』である.

 標本調査の中には,全国的で,抽出率がきわめて高い調査がある.このような調査は「サンプルセンサス」と呼ばれることがある.例えば,『工業実態基本調査』は『工業統計調査』を抽出枠とする標本調査であるが,その抽出率は10分の1以上である.また『法人企業統計調査』は,資本金10億円以上の企業に対しては,全数調査を行っている.そのほか,世帯を調査対象とした標本調査の中では,『就業構造基本調査』や『国民生活基礎調査』などが比較的大きな標本を用いている.

 法的な側面から見れば,官庁統計は指定統計,承認統計,届出統計に分けることができる.指定統計調査は,統計法(昭和22年法律18号)に基づいて行われるもので,国の実施する主要な統計調査をほとんどすべて含んでいる.一方,承認統計は統計報告調整法(昭和27年法律 148号)により承認を受けた統計であり,また,届出統計は,指定統計および承認統計以外の統計調査を国や地方公共団体が行う場合に,その旨を総務庁長官に届け出たものである.

 以上のような区分の他に,小規模な標本を用いて頻繁に行われる調査と,大規模な標本を用いてごくたまに行われる調査との区別をすることもできる.これらの調査は,同一対象に対して実施される場合,互いに補完的な関係を持つが,そのひとつの例は『家計調査』と『全国消費実態調査』である.これらはともに総務庁統計局が実施している調査で,前者の『家計調査』は毎月行われ,標本は約 8,000世帯である.一方,後者の『全国消費実態調査』の標本は約54,000世帯で,5年ごとに実施される.ただし,後者は,前者では対象とされていない農林漁家世帯と単身者世帯を含むという点でも,拡張されており,消費に関するより詳細な情報を提供している.そのほか,『労働力調査』と『就業構造基本調査』などもこれと同様の関係にある.


本学助手
Official Statistics, by Kazuaki Kishida