6.7 著作権制度
文化庁長官官房著作権課マルチメディア著作権室

塚 本 圭 二

1.著作権制度の概要

(1) 著作権法の目的
  「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及
   びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作
   権者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」(第1条)

(2) 著作物:「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は
  音楽の範囲に属するものをいう。」(第2条1項1号)
 ○ 著作物の例示(第10条1項)
      言語、音楽、舞踊、美術、建築、地図、映画、写真、コンピュータ・プログラムなど
 ○ 二次的著作物(第11条)、編集著作物(第12条)、データベースの著作物(第12条の2)

(3) 著作者=著作物の創作者(第2条1項2号)=原始的な著作権者(第17条)
     著作者人格権を有する者(第17条)
 ○ 職務上作成する著作物の著作者(第15条)

(4) 著作隣接権を有する者
       実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者

(5) 著作者の権利、著作隣接権
 ○ 著作権、著作隣接権等の発生:いかなる方式も要しない=無方式主義
                   ┌公表権
         ┌著作者人格権───┼氏名表示権
         │         └同一性保持権
         │
         │         ┌複製権(例:出版、複写録音、録画)・・・出版権
著作者の権利───│         ├上映権、演奏権
         │         ├公衆送信権
         │         ├口述権
         └著 作 権────┼展示権
          (財産権)    ├上映権
                   ├頒布権(映画の著作物のみ)
                   ├譲渡権(映画以外の著作物 例:レコード、プログラム
                   ├貸与権
                   ├翻訳権、翻案権
                   └二次的著作物の利用に関する権利

実演家の権利──────────┬著作隣接権──┬録音権、録画権
                │       ├放送権、有線放送権
                │       ├送信可能化権
                │       ├譲渡権
                │       └貸与権(レコード発売後 1年間)
                ├商業用レコードの二次使用料を受ける権利
                └貸レコードについて報酬を受ける権利(貸与権消滅後 49年間)

レコード製作者の権利──────┬著作隣接権──┬複製権
                │       ├送信可能化権
                │       ├譲渡権
                │       └貸与権(レコード発売後 1年間)
                ├商業用レコードの二次使用料を受ける権利
                └貸レコードについて報酬を受ける権利(貸与権消滅後 49年間)

放送事業者の権利─────────著作隣接権──┬複製権
                        ├再放送権、有線放送権
                        └テレビジョン放送の伝達権

有線放送事業者の権利───────著作隣接権──┬複製権
                        ├放送権、再有線放送権
                        └有線テレビジョン放送の伝達権

(6) 保護期間
 ○ 著作物の創作の時に始まり、著作者の死後50年間を原則とする(第51条)。
 ○ 無名・変名、団体名義、映画の著作物は公表後50年間(第52〜54条)。
 ○ 実演、放送、有線放送はそれぞれを行ったときから50年間、レコードはその音を
  最初に固定した時から50年間(第101条)。

(7) 著作物の利用
 ○ 著作物を利用する場合の手順

┌─────────┐ ┌────────┐ ┌───────┐ ┌─────┐ ┌─┐
│我が国で保護されて│○│保護期間内のもの│○│許諾なく使える│○│利用の許諾│ │利│
│いるものかどうか │→│であるかどうか │→│場合かどうか │→│等を得る │→│用│
└────┬────┘ └────────┘ └───────┘ └─────┘ └─┘
    ×│          ×↓         ○↓             ↑
     └────────────────────────────────────┘
   

一般的な利用方法は、次の3つの方法。
  1) 著作権者から著作物の利用について許諾を得る(上図の場合)(第63条)。
  2) 出版権の設定を受ける(著作物を文書又は図画として出版する場合)(第79〜88条)。
  3) 著作権の譲渡を受ける(第61条)。

(8) 著作権の制限(第30〜50条)   −自由利用できる規定−
 ○ 私的使用のための複製(第30条)
 ○ 図書館等における複製(第31条)
 ○ 引用(第32条)
 ○ 学校等の教育機関における複製(第35条)
 ○ 試験問題としての複製(第36条)
 ○ 点字による複製等(第37条)
 (○ 聴覚障害者のための自動公衆送信(第37条の2))
 ○ 営利を目的としない上演等(第38条)
 ○ プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(第47条の2)
   等

(9) 権利侵害に対する救済等
 ○ 民事上の救済
   侵害行為の差止(第112条)、損害賠償の請求(民法第709条)等
 ○ 刑事上の救済
   3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(第119条1号)等(法人は一億円以下)
 ○ みなし侵害(第113条)

2.図書館実務と著作権

(1) 図書館資料の複製(第31条)
   著作権法施行令第1条の3で定められた図書館に限り、その営利を目的としない事
   業として、図書館資料を用いて、次に掲げる著作物の複製を行うことができる。
 1) 利用者の求めに応じ、利用者の調査研究の目的のために公表された著作物の一部分
   (発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物についてはその全
    部)を人につき1部提供するための複製。翻訳も可。
 2) 図書館資料の保存のための複製(汚損が激しいなどの場合に限る。)
 3) 他の図書館等への提供のための複製(絶版等一般に入手困難な資料の複製を求められ
  た場合に限る。)

(2) 視聴覚資料の利用(第38条)
 1) 営利を目的とせず料金を受けず、かつ、実演家等に報酬が支払われない場合に、公
  表された著作物を公に上演、演奏、口述、上映することができる(1項)。慣行があ
  れば出所の明示が必要。
 2) 営利を目的とせず、かつ、料金を受けない場合に、公表された著作物(映画の著作物
  を除く)をその複製物の貸与により公衆に提供することができる(4項)。
 3) 著作権法施行令第2条の2で定められた視聴覚教育施設等は、料金を受けない場合に、
  公表された映画の著作物をその複製物の貸与により頒布することができる。ただし、
  著作権者への相当な額の補償金の支払が必要(5項)。

(3) 点字による複製等(第37条)
 1) 公表された著作物は、点字により複製することができる。出所の明示が必要。
 2) 公表された著作物はいわゆる点字データとして電子計算機の記録媒体に記録し、また
  は  公衆送信を行うことができる。
 3) 著作権法施行令第2条で定められた点字図書館や盲学校の図書館等の施設では、もっ
  ぱら視覚障害者向けの貸出用として著作物を録音することができる。出所の明示が必
  要。
 1)2)3)ともに翻訳も可。

(4) その他
 ○ 著作権法上の貸出(第26条の2、38条の4項、5項)
    印刷物、音楽の著作物、映画の著作物
 ○ 閲覧、展示(第45条)、館内視聴
 ○ ILLの著作権法上の問題点 → 複製権、公衆送信権
 ○ FAXサービスの著作権法上の問題点 → 複製権、公衆送信権
 ○ 著作物の電子化 → 複製権