6.4 電子出版の動向

丸善(株)学術情報ナビゲーション事業部

ナビ&リンク 企画管理グループ長

松 田 和 之

 1.はじめに  納本制度の対象を電子出版物に拡充することを主要な改正内容とした「国立国会図書館法の一部を改正する法律案」が平成12331日に成立し、平成12101日から施行されることが決定した。[1] 納本制度調査会による納本制度改正のための答申(平成11222日に国立国会図書館長に提出)では、情報を電子的媒体等を使用して公表することを「電子出版」、電子出版によって公表されたものを「電子出版物」と定義した。さらに形態別として、「ネットワーク系電子出版物」とFDCD-ROMDVD等の有形の媒体に情報を記録した「パッケージ系電子出版物」に区分した。今回施行される改正では、「パッケージ系電子出版物」を「電磁的記録(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によっては認識することができない方法によって作られた記録をいう)として複製された著作物」とし、国立国会図書館への納入対象とした。

 一方、機械化から電子化、そして電子図書館へと進化する大学図書館においても、情報提供サービスの充実という使命のもと、電子出版物の収集と利用の促進が図られている。パッケージ系電子出版物といえども、その利用形態としてはイントラネットやLAN等のネットワーク経由であることを前提とした場合も多い。

 客観的に現在の生活を鑑みると、依然「紙を基盤とする情報社会」である感は否めないが、電子出版とネットワークの融合によりもたらされた「情報の生産流通過程の変革」は、従来著者と読者の間に位置した出版社、取次店、書店、図書館に対してもその機能やサービス形態の変革を余儀なくさせている。電子出版を核としたネットワーク提携の可能性を見越した出版社の合併や異業種の参入、購読料等支払に関した電子商取引の増大、図書館における既存メディア資料のデジタル化や電子出版物の貸出返却、電子ジャーナルに代表されるインターネット経由による一次情報の購読、さらには全てに関わる権利問題など、デジタル化された真の高度情報社会に向けて、情報サービス関連市場では新たな挑戦が始まっている。

 このような状況の中で、特に学術情報の生産流通過程や利用形態が今後どのように発展していくのか、財政的課題、制度的課題、技術的課題から今後の電子出版の動向について考察する。

  2.進化するメディア 2-1情報の入手経路

2-2マルチメディア

2-3 Digital Homeless & Digital Divide

  3.メディアとしての書籍・雑誌

             3-1出版過程

             3-2アナログからデジタルへ

             3-3ネットワーク系とパッケージ系

  4.情報と通信の基盤整備

             4-1グローバル・コンピューティング・ネットワーク

             4-2電子出版とネットワークの融合

             4-3電子図書館 (保存からアクセスへ)

             4-4コンソーシアムの形成

  5.電子出版物の基本的な特徴

  6.国内電子出版の動向

             6-1電子ブック

             6-2 PDF出版

             6-3 WWWの開設

  7.海外電子出版の動向

             7-1 Open eBook

             7-2学協会、大学出版局、商業出版社

  8.学術系出版社の出版事情

             8-1 CAPとY2Kへの対応

             8-2アグリゲータへの対応

             8-3既存タイトルの電子版と新規出版

             8-4 Copyright in an Electronic World

             8-5価格政策(値上がりの要因)

  9.学術情報の流通の変化と大学図書館

             9-1コレクションの見直し

             9-2 DDSと電子ジャーナルの活用

             9-3現状組織(予算)の組み直し

             9-4組織内外の専門家や業者とのアライアンス強化(アウトソーシング)

 10.電子ジャーナルサービスの現状

             10-1提供形態

             10-2価格と利用形態

 11.既存資料のデジタル化

             11-1メディア変換

             11-2保存と活用

             11-3作業工程

             11-4費用対効果

 12.電子出版物活用への社会的合意の必要性

             12-1権利の尊重

             12-2有償提供への社会的合意 _ 無償提供

 参考資料 [ 1] http://www.ndl.go.jp/ndl_frm_7.html