7.6 東京大学基盤センター「電子図書館部門」概要

                                 東京大学附属図書館

                                     笹川 郁夫

 

はじめに

 □高度情報通信社会推進に向けた基本方針(平成7年2月)

 □科学技術基本計画(平成8年7月)

 □大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について(平成8年7月)

 □学術情報データベースの整備について(平成9年12月)

 □科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について

  −「知的存在感のある国」を目指して−中間報告(平成11年5月26日)

 以上の指針等に見られるように大学図書館におけるサービス機能の強化に係

る整備が求められているところであるが,こうした指針等を基に電子化社会に対

応した大学図書館の技術水準の向上を図り,新しい形態の学術情報,電子的資

料,電子的情報サービス,資料電子化の推進を進めて行く必要がある。

I.東京大学情報基盤センター概要

 (1)情報基盤センター設立経緯

   「情報社会にふさわしい東京大学の情報基盤整備について(中間報告)」:

   東京大学における情報基盤の整備に関する懇談会

 (2)附属図書館における学内情報基盤整備への対応

  □ 情報蓄積 → 研究成果のディジタルアーカイブのDB化

  □ 情報創造 → 新しい情報の蓄積増大と相互交流の活発化

  □ 情報発信 → 図書館情報のディジタルライブラリ化

II.東京大学情報基盤の整備に関する基本方針

 (1)研究成果や教育内容のディジタルアーカイブを大学として積極的に構

   築し,それらをインターネットや将来的にはCS衛星放送などを利用

   して学内外に向け広く発信し我が国全体の学術環境や生涯学習環境の

   整備に貢献する。

 (2)教材の電子化を進めるとともに,マルチメディア教育環境を整備し,

   本学における講義の高品質化,高効率化を強力に支援する。

 (3)高速ネットワーク網を更に強化し,また将来の衛星通信なども視野

   にいれた,新しいマルチメディアキャンパスネットワークを構築する。

 (4)情報基盤のネットワーク化,分散化に対応した,新しい情報リテラ

   シー教育の要求に応えるために,情報リテラシー教育支援基盤を整備

   し,またヘルプデスクなどのコンサルティング体制を構築し,エンド

   ユーザに対する情報基盤サービスを向上させる。

 (5)新しい情報基盤を担うために,現状の各種センター等の組織を統

   合・再編成し,組織をより柔軟化させ有効に機能させなければならない。

 (6)本学の情報基盤を担うセンターは,単なる業務機関とするのではな

   く,不断の研究開発をも重視し,積極的に学外との共同研究を実施し,

   その成果を情報基盤に反映させるとともに,社会への定着に寄与する

   ように努める。

 (7)本学の情報基盤に関する企画調整を行う体制を構築する。そこでは,

   中長期的な情報基盤戦略の企画立案を実施し,学内全体の情報基盤

   を全学的な見地から調整する。

 (8)全学の各部局で管理されている教職員,学生の身分に関する情報を

   情報基盤の活用資格であるアカウント情報に結び付ける手段を強化す

   る。

 (9)大学の構成員の個人情報の扱い方について,プライバシーやセキュ

   リティの問題も含め適切な取り扱い指針を確立する。

 (10)柏キャンパスにおける教育研究環境整備に関して,重点的に配

   慮する。

III.東京大学附属図書館と情報基盤センターとの関係

  附属図書館は,社会の高度情報化に適合した学術情報サービスを学内外

 に効率的に提供していくために,サービス・業務の高度化を要請されてい

 る。そのため,図書館を本学の情報基盤施設において学術情報コンテンツ

 面を担う重要な一翼として位置づけ,電子図書館機能を組み込む。

 1.(目的)

   電子図書館機能を担う部門は,附属図書館の全学的統合機能を担う総合

  図書館の資源を活用し,計算機システムおよび情報教育資源との結合によ

  って,情報化された大学図書館のサービス・組織の先行形態の実現,学術

  情報コンテンツの整備およびその学内外流通ネットワークの構築によって,

  本学の情報基盤の強化に寄与することを目的とする。

 2.(具体的姿)

 (1)研究開発および教育支援機能を備えることにより,情報社会の進展

   に即応した学術情報サービスを構築・展開しうる電子図書館組織を実

   現する。

 (2)図書館情報および学術情報の流通ネットワークの構築により,ヴァー

   チャルに一体化された東大図書館システムを構築する。

 (3)電子ジャーナル,文献・参考・統計など各種の市販のディジタル情

   報の集中提供,および教材・研究用資料・研究教育情報のディジタル・

   ライブラリを構築し,大学情報発信のための拠点とする。

 (4)マルチメディアを含むディジタル情報の利用・発信に伴う著作権処理

   を支援し,権利処理に関する研究開発を行う。

 (5)情報リテラシーに関する研究者・教員・学生のための支援体制を作

   り,特に総合図書館および教養学部図書館本館における学部学生の自

   主的学習環境の改善に寄与する。

3.情報基盤センター(電子図書館部門)と附属図書館の役割分担

   (情報基盤センター)             (附属図書館)

  電子化資料の作成・提供          紙媒体資料の収集・蓄積・提供

  学術情報ネットワークサービスによる提供  ○1次資料の収集・蓄積・提供

 ○日本語ブックコンテンツ情報の提供     ○2次資料の収集・蓄積・提供

 ○インターディスクの作成提供        ○国際資料(ドキュメント等)

                        のレファレンスDBの整備強化

                        収集・蓄積・提供

 ○貴重書,研究成果のディジタル化と提供   ○一般市民への資料提供

 ○ドキュメントデリバリーサービスの高度化  ○貴重書の保存・継承

 ○情報リテラシー環境の整備         ○知的創造の場の提供

 ○図書館業務の電子化・システム化の推進

IV.図書館の電子化と電子図書館

 1.所蔵目録・所在情報のオンライン提供

 2.図書業務の全面的自動化による効率的な業務遂行

 3.図書館間相互利用体制の構築

 4.電子ジャーナルを含む諸種のディジタル化資料の整備・運用

 6.情報リテラシー教育

 7.劣化資料や貴重資料のデータベース化による保存活用