7.5 大 学 図 書 館 に 期 待 す る も の
──西洋古典学と古代・中世図書館史の視点から──
筑波大学講師 秋山 学
古代・中世地中海世界における図書館の歴史は、図書館史学の基礎的かつ本質的な部分を構成しています。そこで、古代中世図書館史を概括的にたどりながら、「学府」と「図書館」の関係をめぐっていくつかの興味深いトピックを取り上げ、「司書」と「研究者」の関わり・役割分担のあり方について考えてみたいと思います。
情報科学の発展や電子化などに伴い、図書館は現代のニーズに適った対応を要請されていますが、古代学の立場から図書館の意義に光を当てることができれば幸いです。
I はじめに〜「大学」と「図書館」_
II 古代・中世地中海図書館史をめぐって
1) アリストテレス(B.C.384-322) の学問論と図書館理念の成立
──「分類」の意味──
2) アレクサンドリア図書館長たちの活動;カリマコス(B.C.310-240) を中心に
──学者=詩人=司書──
3) アレクサンドリアにおける異文化流入・翻訳の問題
──アジア的文化とヨーロッパ的文化の接触──
4) ビザンティン帝国における図書館の変遷
──イコン破壊論争(A.D.726-843) と写本・学問の関わり──
5) `Bibliotheca' の意味
──フォティオス(820-91)の著作から──
6) 西欧中世初期における図書館;カッシオドルス(490-583) をめぐって
──ウィウァリウム修道院と写本活動の展開──
7) 「大学」の成立と図書館
──ドミニコ会(1216 _) の場合──
8) ルネッサンス期における書籍と社会;ベッサリオン(1403-72) の活動をめぐって
──ヴェネツィア・聖マルコ図書館の成立──
IIIおわりに_研究者と司書的資質_
〈参考文献〉
・寺田光孝/藤野幸雄『図書館の歴史』(日外教養選書、1994年).
・L.D.レイノルズ/N.G.ウィルソン『古典の継承者たち』
(西村賀子/吉武純夫訳、国文社、1996年).
・秋山学「バシレイオスと「ルネッサンス」──神学と人文主義の関係をめぐって──」
(地中海学会編『地中海学研究』XXII号所収、1999年).