7.10 生涯学習の動向
東京家政大学・同大学院教授 伊藤俊夫
I 生涯学習(生涯教育)理念を必要とした背景
注・社会の変化
II 教育の改革原理としての生涯学習
ア 教育体系の改革 注・学校中心社会から生涯学習体系への移行
イ 学校教育の改革 注・生涯学習体系への組み込み。物理的・内容的スリム化
注・ lifelong integrated education ☆ integrated =統合
@ 水平的統合
A 垂直的統合
B 内容的統合
III 学歴弊害解消政策としての生涯学習
ア 学習概念の拡張 注・環境や雰囲気の醸成
イ 教育の分散化の原理 注・教育機会の拡大。総合推進(推進組織と推進計画)
ウ 教育の分権化の原理 注・学習成果の評価と活用《学習奨励効果と社会資源効果》
IV 生きがい追求としての生涯学習
ア 社会の変化にかかる適応や駆動のための生涯学習
イ 自分さがしの生涯学習 注・自己実現。生涯徳育
ウ 仲間さがしの生涯学習
エ 社会形成活動としての生涯学習 注・まちづくり。ヨコ型ボランティア。NPO
V 学校と生涯学習
ア 学習指導要領改訂や学校週五日制
イ 開かれた学校。開かれた大学 注・教育資源・学習資源
ウ 規制緩和=自由と責任 注・多様な教育需要に対する柔軟な対応
エ 幼年会創唱・学社両輪論・学社連携論・学社融合論
オ リカレント教育と大学 注・リフレッシュ教育。社会人学生・院生
カ 豊かな心をはぐくむ 注・現代的課題。次世代を育てる心を失う危機
資料
1 生涯教育と生涯学習
☆中央教育審議会答申「生涯教育について」=昭和 56 年
今日、変化の激しい社会にあっては、人々は、自己の充実・啓発や生活の向上のため、適切かつ豊かな学習機会を求めている。これらの学習は、各人が自発的意思に基づいて行うことを基 本とするものであり、必要に応じ、自己に適した手段・方法は、これを自ら選んで、生涯を通 じて行うものである。この意味では、これを生涯学習と呼ぶのがふさわしい。
この生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方である。言い換えれば、 生涯教育とは、国民の一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習 を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理念である。
2 生涯学習体系への移行
☆臨時教育審議会「教育改革に関する第二次答申」=昭和 61 年
A過度な受験競争などをもたらしている学歴偏重の社会的風潮を改め、教育は青年期だけの営みではないという考え方から、各人の生涯を通じる自己向上の努力を尊び、それを正当に評価する学習社会を目指すことが望まれること。
B目覚ましい科学技術の進展や経済発展が、技術革新と産業構造の変化をもたらすとともに、 社会の都市化や情報化を進めており、多くの人々が新たな知識・技術の習得等の種々の対応をせまられていること。
こうした諸提言の歴史的な経緯を踏まえて、本審議会は生涯学習体系への移行を主軸として、 学校中心の考え方を脱却し、21世紀のための教育体系の総合的な再編成を提案する。
3 生涯学習推進上の留意点
☆中央教育審議会答申「生涯学習の基盤整備について」=平成2年
今後生涯学習を推進するに当たり特に次の点に留意する必要があろう。
A生涯学習は、必要に応じ、可能なかぎり自己に適した手段及び方法を自ら選びながら生涯を通じて行うものであること。
B生涯学習は、学校や社会の中で意図的、組織的な学習活動として行われるだけでなく、人々のスポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動などの中でも行われるものであること。
参考図書
辻 功 編 「概説生涯学習」 第一法規出版
伊藤俊夫編 「生涯学習の支援」 実務教育出版
山本恒夫編 「生涯学習」 東京書籍
伊藤俊夫編 「社会教育委員のための生涯学習」 全日本社会教育連合会