1.5  新しい大学図書館サービスのあり方

         図書館情報大学教授 石井 啓豊


はじめに
 現在の大学図書館は、これまでの伝統的な資料の収集、サービスを展開する一方で、資料の電子化に対応した新しいサービスの構築を迫られている。また、大学のあり方自体の変革に伴って、伝統的なサービスの領域においても、サービスの高度化や多様な展開が求められている。ところで、電子図書館などの技術的な課題とその可能性はしばしば論じられているが、現在の大学図書館の様々な課題は、むしろ、新しい技術の可能性と制約を大学図書館の環境の中で制度的、経営的にどのように位置づけていくかという課題としてとらえることが重要であろう。そこで、このような観点から、大学図書館におけるサービスの展開について、以下の事項に沿って考えてみたい。

1.電子図書館関連の領域の整理
1.1 情報の生産と出版
(1) 学術雑誌の出版
(2) そのほかの資料の出版
(3) 既存資料の電子化(ディジタル化)
(4) WWWによる草の根出版
(5) 科学技術データ

1.2 流通メカニズム
(1) 流通の特徴
(2) 流通を考える枠組み
(3) 情報提供システム(サーバ)
(4) 制度的インタフェースと技術的インタフェース

1.3 出版者によるオンライン提供と図書館を通じたアクセス
(1) 図書館システムが介在する方式
(2) 図書館のシステムが介在しない方式
(3) WWWによる出版

1.4 大学図書館による電子図書館サービス
(1) 外部から導入した情報の提供
(2) 電子化蔵書をもつ図書館のサービス

1.5 情報ユーティリティによるサービス

2.図書館の経営管理
(1) 戦略的思考
(2) 大学における図書館の位置

3.図書館の伝統的サービスの方法
(1) 図書館の発展区分(Buckland)
(2) 紙メディア図書館がなぜこのような形態をとっている
(3) 大学図書館サービスの基本戦略
(4) 実現方策(個別戦略)

4.電子化時代の選択
(1) 大学図書館の目的と役割
(2) 環境変化

5.電子化時代のサービスの基本戦略
(1) 固有の利用者へのサービス  Local is beautiful
(2) ストックの形成と維持(情報資源の構造)
(3) セルフ・サービスと人的サービスの組み合わせ
(4) 費用対効果の重視
(5) National Resource

6.どのような構造になるのか?
(1) 電子図書館システム − 統合的アプローチ
(2) 情報資源への総合的アクセスと利用、処理環境の提供
(3) 電子情報の生産
(4) 利用者による費用負担の考え方
(5) 伝統的サービスの改善努力
(6) 新しいサービスの開発
(7) 図書館協力
(8) 図書館組織の再構成