1.4 大学図書館の現状と課題

          東京大学附属図書館事務部長 雨森 弘行


1. はじめに
 今日、すでに情報化社会から情報社会へと移行し、今や高度情報化社会へと進みつつあるといわれている中にあって、大学図書館は、大学における研究・教育活動を支える情報基盤の一つとして、その重要性がますます高まってきている。加えて、一般市民の生涯学習活動の興隆に伴い、地域社会への図書館サービスの提供もまた強く望まれるようになってきている。また、我が国の保有する学術情報への海外からのアクセスの要求も一段と強まってきている。
 一方、国の行財政改革に象徴されるように、大学の改革も急速に進められつつあり、大学図書館もその一環として、組織機構、管理運営の全般にわたって抜本的な改革を迫られている。
 このような状況の中で、大学図書館にとっていま必要なことは、それぞれの課題を解決していく上で、全国レベル、地域(専門)レベル、大学レベルでどのような役割分担を行っていくかについて検討を深め、大学間はもとより、他の図書館・情報関係機関とも緊密に連携をとりながら、可能なところから速やかに改善・充実に着手していくことである。

2. 大学図書館をめぐる国の行政指針策定の動向
(1) 学術審議会
  ・「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」(答申)(H4.7.23)
  ・「大学図書館機能の強化・高度化の推進について」(学術情報資料分科会学術情報部会)
    (H5.12.16)
  ・「大学図書館における電子図書館的機能の充実・強化について」(建議)
    (H8.7.29)
(2) 生涯学習審議会
  ・「地域における諸施設の生涯学習機能の充実方策について」(答申)(H8.4.24)
(3) 大学審議会
  ・「大学教育の改善について」(H3.2.8)
(4) 内閣
  ・「科学技術基本計画」(閣議決定)(H8.7.2)
(5) 科学技術会議
  ・「諮問第23号「科学技術基本計画について」に対する答申」(H8.6.24)
(6) 電気通信審議会
  ・「高度情報通信社会構築に向けた情報通信高度化目標および推進方策」(答申)
    (H8.5)
(7) 高度情報通信社会推進本部
  ・「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(策定)(H7.2.21)
  ・「教育・学術・文化・スポーツ分野における情報化実施指針」(文部省策定)
    (H7.8)

3. 方策策定と役割分担
   (国立大学の場合)
(1) 国立大学図書館協議会
   <全国レベル>
    1) 特別委員会
     ・「図書館情報システム特別委員会報告」(H10.6)
        ・次期電算化システム専門委員会  ・ILLシステム専門委員会
     ・「著作権特別委員会報告」(H10.6)
     ・ 図書館電子化システム特別委員会(改組継続)
     ・ 国際情報アクセス特別委員会 (同上)
     ・ 著作権特別委員会(継続)
     ・ 情報資源共用・保存特別委員会(新設)
     ・ 図書館組織・機構特別委員会(同上)
    2)調査研究班
     ・「国立大学図書館における公開サービスに関する当面の方策について」
       (S.61.9)
     ・「保存図書館に関する調査研究班報告」(H6.3)
     ・「資料の保存に関する調査研究班報告」(H6.5)
     ・「大学図書館員の育成・確保に関する調査研究班報告」(H8.7)
     ・「身体障害者サービスに関する調査研究班報告書」(H9.6)
   <地域レベル>
    1) 図書館資料の相互利用(各地区)
    2) 図書館職員の研修・交流(各地区)
    3) データベースの共同利用(試行)(九州地区)
(2) 国立大学協会
   第7常置委員会
(3) 国公私立大学図書館協力委員会
(4) 国立国会図書館図書館協力部
(5) 日米文化教育交流会議(CULCON)

4. 大学における方策策定
  ・ 奈良先端科学技術大学院大学、京都大学、筑波大学、東京工業大学
  ・ 大阪市立大学
  ・ 慶応義塾大学、立命館大学