7.8 海外における電子図書館の現状

                         図書館情報大学教授   杉本重雄


1. はじめに

ディジタル図書館は、様々な情報技術を利用し、ディジタル化された様々なデータや図書・資 料のコレクションを提供する環境である。図書館には公共図書館、大学図書館、専門図書館、 保存図書館等異なる役割のものがあり、図書館は資料を収集・組織化し、蓄積するとともに、 自身でも情報アクセスのための情報(メタデータ、2次情報)を作っている。こうした点はディジ タル図書館においても同様であり、ディジタル図書館は、コンピュータとネットワークによってデ ィジタル化された環境で様々な情報資源(1次情報、メタデータ、図書館員)を利用者に提供 する[1][2][3]。

ここではディジタル図書館という語をDigital Libraryの訳として用いている。同様な意味で Electronic Library、Virtual Libraryという語が使われている。これらは、それぞれ電子図 書館、仮想図書館と訳されるのが一般的である。Digital Libraryという語は1990年代に入 ってアメリカを中心として用いられ始めた語で、現在では米国議会図書館のNational Digital Library ProgramやNSF/ARPA/NASAのDigital Library Initiative等を始め として、Digital Libraryという語が最も一般的に利用されている。Electronic Libraryという 語は以前から広く利用されてきた語であるが、逆に使い古された感がしなくもない。Virtual Libraryという語はネットワーク上に仮想的に作られる図書館といった意味でよく用いられる。 ここでは、これらの語は全て同じ意味ととらえ、ディジタル図書館という語を用いる。

ディジタル図書館で扱う1次情報は図書や雑誌文献、写真や地図、オーディオビジュアル資 料など多様である。また、2次情報は従来の図書館システム以上に整備する必要がある。コレ クションの形成から利用に至る過程で様々な情報技術が必要であること、そこで利用される情 報技術は蓄積される情報の種類や利用者の特性に依存する。このように、ディジタル図書館 を実現するには様々な情報資料を扱い、かつ多様な利用者を満足させるための情報技術を 総合する必要があることは言うまでもない。

2. ディジタル図書館に関する研究開発の全体像

2.1 概要

世界の先進各国を中心としてディジタル図書館(Digital Library)の研究・開発が活発に進め られているが、中でもアメリカ合衆国が最も先進的である。アメリカでは議会図書館(Library of Congress)や各大学図書館で活発にディジタル図書館の研究・開発が進められている。

議会図書館ではNational Digital Library Program (NDLP)と呼ばれる資料を電子化し て蓄積提供するディジタル図書館プロジェクトが進められている。大学では大学図書館を中 心として、図書館情報学や計算機科学関連の研究者と協力しながら、様々な分野の資料の 電子化と提供が進められている[4]。大学には多様な分野の研究者、学生がいるので、様々な 分野の電子化資料の提供を進めるとともに、従来の資料と電子化資料を統合的・総合的に利 用するための図書館の環境整備が進められている。このようにして構築される新しい図書館 環境は、インターネットを介して外界とも直接つながっているので、資料を探し情報を得るとい う場であるのみならず、そこで創造した情報を発信するための場としても利用できるように考え られている[5]。

アメリカでは議会図書館や大学図書館を中心として、資料のディジタル化を中心とする多くの ディジタル図書館プロジェクトが進められている。また、1995年5月には議会図書館や主要な 大学図書館が中心となって、より広くディジタル資料の収集と利用を進めることを目的として National Digital Library Federation (NDLF) を形成した[6]。こうした活動を通して、ディ ジタル図書館に図書館間の協力を進め、研究者や学生のためのより良い情報アクセス環境の 実現を目指すと共に、大きなコストの下に作られた電子化資料の共同利用を進めようとしてい る。

1994年から4年計画で始まったNSF/NASA/ARPAの共同助成により後述の6大学で進め られているディジタル図書館研究プロジェクト(Digital Library Initiative)では、ディジタル 図書館のための新しい情報技術の研究開発が進められている[7]。この研究プロジェクトは、 後述するように、各プロジェクトが異なった分野を指向し、大学内にとどまらず出版社や情報 関連企業、政府関連機関、公共図書館等いくつもの機関と協力しながら研究を進めている。 また、来年(1998年)には次のプロジェクトが開始される予定であり、世界情報基盤によってま すます広がる情報資源を活用するための基盤技術、応用技術の研究開発が進められる。

ヨーロッパでは各国の国立図書館での資料のディジタル化プログラム、ERCIM(European Research Consortium on Informatics and Mathematics)による研究プログラム[8]、De Montfort大学(イギリス)等の大学規模のディジタル図書館[9]、ディジタル図書館や情報ネッ トワークの推進を図るためのイギリスのUKOLNによるeLibやAriadne[10][11][12]など、 様々な活動が進められている。また、IFLAはディジタル図書館に関する豊富な情報を提供し ている[13]。

アジア太平洋地域でも、オーストラリアやシンガポールなど活発な活動を進めている。我が国 でも国立国会図書館とIPAによるパイロット電子図書館プロジェクト[14]、学術情報センター による電子図書館プロジェクト(NACSIS-ELS)[15]、奈良先端大による大学規模のプロジェク ト[16][17]等があり、ディジタル化した資料の蓄積と提供を進めている。また、JIPDECによる 次世代電子図書館システム研究開発プロジェクトでは、次世代電子図書館のための情報技 術の研究開発を進めている。

2.2 国立図書館におけるディジタル図書館プロジェクト

国立図書館は各国の様々な図書館の要であり、保存図書館として働いているので非常に多 数の蔵書を持ち、多くの貴重資料を所蔵している。国立図書館において進められているプロ ジェクトの場合、著作権に関する問題がなく、かつ資料の保存性とアクセス性の両方を高める ことができるため、貴重資料のディジタル化から始めているところが多い。また、ディジタル図 書館がG7でGII (Global Information Infrastructure)上の重要課題として認められたこと から、国立図書館間の協力も進められようとしている。

米国議会図書館では1990年代に入ってNational Digital Library Program (NDLP)と呼 ばれる大規摸な資料の電子化プロジェクトを始め、現在では多くの資料がWWWを介して利 用できるようになっている。NDLPには法令や議事録等の議会関係の資料を提供する THOMAS[18]、国際的な協力の下に法律資料を提供するGLIN (Global Legal Information Network)[19]、歴史的資料を集めたAmerican Memory[20]といった分野毎 のプロジェクトがある。

我が国の国立国会図書館では情報処理振興事業協会(IPA)と協力してパイロット電子図書 館プロジェクトを進め、貴重資料から現代の週刊誌までを含む多様な資料の電子化を進めた。 また同館は子供電子図書館プロジェクトも進め明治期の児童書の電子化等を進めている。

フランス国立図書館では、新しい図書館に移転するにあたり、資料のディジタル化を進めてい る。ディジタル化の対象となる資料は図書、写真や絵画、オーディオ情報など様々であり、 1997年までに10万件の図書、30万枚の写真、1000時間分の録音資料のディジタル化を計 画している[21][22][23]。

このほか、英国図書館[24]、カナダ国立図書館[25]等でも積極的にプロジェクトが進められて いるほか、G7による共同プロジェクト(Bibliotheca Universalis)[26]、UNESCOによる世界 的な文化遺産である貴重資料の保存を目指したVirtual Memories of the Worldなどが行 われている[27][28]。

2.3 大学図書館での活動

2.3.1 ディジタルコレクションの構築と利用

大学では、市販のCD-ROMやオンラインデータベース以外にキャンパスLANとインターネッ トを利用した、新しい形態のサービスの提供が進められている。当然のことではあるが、大学 は様々な研究分野をカバーしているので、大学図書館では人文科学、社会科学、自然科学・ 技術、芸術、医学等多様な分野のディジタルコレクションが構築されている。

[学術論文の提供] 1980年代の終わり頃に、カーネギーメロン大学図書館では、キャンパスLANを利用して、科 学技術分野の雑誌記事を検索し、検索した文献を利用者端末上で読むことのできる環境を 提供するMercuryプロジェクトが進められた。90年代に入り、Elsevier Science社の提供す る科学技術分野の学術雑誌の電子化データを利用して、大学が雑誌記事の検索・閲覧環境 を作り上げるというTULIP(The University Licensing Project)が進められ、ミシガン大学や カリフォルニア大学等9大学でシステムの開発が進められた。同じころ、Spriger-Verlag社の 医学関係学術雑誌を、AT&T社が開発した検索・閲覧システムであるRightPagesに載せた RedSageシステムの実験がカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)図書館で進められ た。Elsevier社ではTULIPでの経験をもとに学術雑誌の電子出版を進めるElsevier ElectronicSubscription(EES)を開始している。

[電子テキストの提供] 人文科学分野では、テキストそのものが研究対象となるため、高品質でかつ信頼性の高い電 子テキストが必要とされてきた。そのため、いくつもの大学図書館に電子テキストセンターが置 かれ、電子テキストの作成、購入、蓄積、提供といった業務を担っている。電子テキストは原資 料の文書としての構成を忠実に反映する高品質なものである必要があり、かつ作成した電子 テキストは長期間利用できるよう特定のハードウェアやソフトウェアに依存しない形式で蓄積す る必要がある。そのため、SGML(Standard Generalized Markup Language)が広く利用さ れている。

[大規模な雑誌電子化プロジェクト - JSTOR[29]]
Mellon財団からの助成の下にミシガン大学において進められたJSTOR(Journal Storage) プロジェクトは、同大学がTULIPのために開発したソフトウェアを基礎にして、社会科学分野 の主要な雑誌を今世紀初頭に出版されたものから最近のものまで全てを電子化して提供する ことを目的として始められた。現在、それをさらに発展させ哲学や社会学、数学などの分野の 雑誌にまでコレクションの範囲を広げている。ディジタルコレクションの開発にはコストがかかる が、構築したコレクションの大学間での共有を進めることで、各図書館が個別に冊子体のコレ クションを持ち続けることの様々なコストを軽減し、かつ研究者に豊富なコレクションを空間的 距離を越えて提供することを目的として事業が進められている。

[芸術分野での電子化資料の利用 - MESL]
MESL(Museum Education Site Licensing program)は、Getty財団の助成の下に進め られているネットワーク環境における芸術作品の教育のための情報技術の開発と利用の推進 を目的としているプロジェクトで、いくつかの美術館や図書館が所蔵する絵画等の芸術作品の ディジタルイメージのコレクションを作成し、これをミシガン大学等の7大学に提供している。

[大学間共同の歴史資料電子化プロジェクト - Making of America]
Making of Americaはコーネル大学とミシガン大学が共同で進めているプロジェクトで、19 世紀のアメリカで出版された一般の雑誌や単行本、個人の日記や記録なども含め、19世紀の アメリカの歴史に関する図書・資料のディジタル化を進めている。

2.3.2 大学におけるディジタル図書館環境 - ミシガン大学を例として[30][31][32]

米国の主要な大学図書館ではディジタルコレクションを整備するとともに、Netscape等の誰も が持っているツールを利用してディジタルコレクションにアクセスできるよう情報環境の整備も 進めている。ヨーロッパでもオランダのTilburg大学やイギリスのDe Montfort大学では、電 子化資料を指向した図書館環境の構築を進めている。我が国では、奈良先端大が自然科学 系の大学院大学であるという特徴を活かして電子化した資料を主とする図書館を実現してい る。また、1996年7月に学術審議会の出した「大学図書館における電子図書館的機能の充 実・強化について」の建議によって各大学図書館での電子図書館的機能に対する取り組みが 進むと考えられる。

図書館には非常に広範囲な分野の資料が蓄積されてきた。そのため、単一の分野、あるいは 特定の出版社の雑誌だけがディジタル化されても利用者が得られるメリットは多くない。ここで はミシガン大学を例として大学における総合的なディジタル図書館(環境)への取り組みにつ いて示す。

ミシガン大学では、図書館を中心として大学全体のディジタルコレクションと情報アクセス環境 の整備を進めるDigital Library programを進めてきた。前述のTULIPやJSTOR、 MESL、Making of Americaのほか人文科学分野の電子テキストの蓄積と提供を進めてい るHTI(Humanities Text Initiative)等、多くの分野をカバーする。また、ミシガン大学は NSF/NASA/ARPAのディジタル図書館研究プロジェクトの一つであり、先進的なディジタル 図書館システムの研究も進めている。このように、大学全体のディジタル情報環境が進化する と、図書館自身が提供する情報以外にも多くの情報が大学から発信され、大学内外からの情 報アクセス要求が高まる。そのため、図書館には大学全体のInformation Gatewayとしての 役割も期待されている。

ミシガン大学では1996年にMedia Unionと呼ぶ新しい図書館を開館した。Media Union は工学部や芸術系の学部が置かれている北部キャンパスに設置されたもので、そこには従来 の図書館と同様な開架式書架と閲覧机が置かれたエリアのすぐ近くに、ネットワーク端末(パ ーソナルコンピュータ)を多数備えた閲覧机が置かれ、利用者は備え付けの端末や個人のパ ソコンを使ってネットワークに接続することができる。また、コンピュータグラフィックスや仮想現 実感(Virtual Reality)のための高性能のコンピュータ、さらにダンススタジオやオーディオス タジオなども用意されている。Media Unionは図書や資料の置き場としての図書館ではなく、 そこに用意される多様な情報資源とメディアを使って情報を獲得し、かつ創造した情報を発信 するための環境としての場を提供することを期待されている。

2.4 ディジタル図書館研究プロジェクト

1994年秋に発表されたNSF他による下記の6大学への研究助成の決定[7]は、国家情報基 盤(National Information Infrastructure, NII)上のディジタル図書館のための新しい情報 技術と図書館像を作りだす研究プロジェクトとして非常に注目された。この研究助成プログラム では、計算機科学、図書館情報学他の複数の分野からの研究者が参加することと、大量のデ ータを持つ機関(出版社、政府機関、図書館等)との共同プロジェクトを進めていることが特徴 的である。また、これらは将来の大規摸なシステムのための実験台(testbed)の構築を目指し ている。
(1) カーネギーメロン大学(CMU): Informedia Interactive On-line Video Digital Library[33]
画像認識、音声認識、自然言語理解等の技術を総合し、放送局から提供されるビデオ 映像を対話的に検索と視聴ができるシステムを作り上げる。
(2) ミシガン大学(University of Michigan): The University of Michigan Digital Library (UMDL)[34]
宇宙・地球科学分野の多様な資料を、高校生から研究者まで幅広く多様な利用者に合 わせて提供することを目的としている。
(3) イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校(UIUC): Interspace[35]
IEEE他の出版社と協力し、大量の科学技術分野の学術文献を非常に多数の利用者に 提供する。雑誌論文をSGML(Standard Generalized Markup Language)に基づく全文 データベースとして蓄積し、巨大なテキストデータの空間から所望の情報を導きだすシステム の構築を目指している。
(4) カリフォルニア大学バークレイ校(UCB): Electronic Environmental Library[36]
カリフォルニア州が持つ大量の環境情報に関する大規模データベースを構築する。航空 写真、環境データ等を含む多様な情報を専門家から一般利用者までを含む多様な利用者に 提供する環境を構築する。
(5) スタンフォード大学: Stanford Integrated Digital Library Project[37]
ネットワーク上に提供される様々な情報を、仮想的なひとつの図書館として利用できるよ うに環境を開発する。
(6) カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB): Alexandria Digital Library[38]
地図や航空写真などの空間的・地理的な情報の相互利用性を高め、大規模データベー スを構築することを目的とする。

2.5 公共図書館での活動

公共図書館のディジタル図書館に関連した活動は、現在のところ主として利用者のインターネ ットへのアクセスポイントとして働くことおよび情報アクセスの援助にある。例えば、カリフォルニ ア州ではカリフォルニア州立図書館、カリフォルニア大学バークレー校が中心となって公共図 書館を利用して州の情報へのアクセスを進めるプロジェクトInFoPeopleを進めている[39]。ま た、ミシガン州ではミシガン州立図書館やミシガン大学が中心となって住民のための電子化し た資料を提供するMichigan Electronic Libraryと呼ぶプロジェクトを進めている[40]。この ほか、ロサンゼルス市図書館[41]、バークレイ市図書館[42]、インディアナ州セントジョセフ郡 図書館[43]など、図書館自身が積極的にインターネットおよび電子的資料への対応を進めて いるところも見られる。ミシガン大学の図書館情報学大学院(School of Information and Library Studies、現School of Information)で始められたInternet Public Library (IPL) はインターネット上で公共図書館的な機能を実現しようと始められた試みで、児童図書の閲読 や参考サービス等種々のサービスが提供されている[44]。

3 ディジタル図書館に関連する活動

3.1 National Digital Library Federation (NDLF)[6]

1995年に議会図書館と有力な大学図書館が集まってNDLFを結成した(注)。その目的は、 研究者、学生、ならびに一般市民の誰もがアクセスすることができ、かつアメリカの知的・文化 的財産の成り立ちと変遷を記録した電子化資料の収集と蓄積を協力して進めていくことであ る。

ディジタル化された資料は、内容、技術、利用方法や条件等、色々な面で異なるため、ディジ タル化を進める機関の間の協力が不可欠である。NDLFでは、現時点での重要項目として以 下の3点を中心に議論を進めようとしている。
・ディジタル情報の発見(Discovery)と検索(Retrieval)
・知的財産権と経済モデル
・ディジタル情報のアーカイブ

(注:現在の参加メンバー: The Library of Congress, The National Archives and Records Administration, The New York Public Library, the Commission on Preservation and Access, および以下の各大学図書館、University of California at Berkeley, Columbia, Cornell, Emory, Harvard, Michigan, Pennsylvania State, Princeton, Southern California, Stanford, Tennessee-Knoxville, Yale)

3.2 その他の活動

・CNRI (Corporation for National Research Initiatives)[45]
NII上の新しい情報技術の研究開発計画の構想、計画、実行を進めることを目的として非営 利組織のCNRIではディジタル図書館に関連したいろいろなプロジェクトの推進を支援してい る。たとえば、計算機関連学科で出版される多数のテクニカルレポートを提供するプロジェクト (NCSTR)、ネットワーク上の文書に一意に決まる識別子を与えるHandleシステム他、いろい ろなネットワーク、電子ディジタル図書館関連プロジェクトがある。また、CNRIで出版している D-lib magazine[46]はディジタル図書館に関する主要なオンラインジャーナルである。 Handleシステムは議会図書館の著作権事務所(Copyright Office)によるインターネット上の 出版物、たとえばWWWのホームページの著作権登録システム(CORDS: Copyright Office Electronic Registration, Recordation and Deposit System)の実験的プロジェクトに利用 されている。

・Dublin Core Metadata Element Set[47][48]
インターネット上に出版される非常に多数で多様な文書を効率良く検索、発見するには、ネッ トワーク上の文書に適した書誌情報(メタデータと呼ばれる)の記述方法とそれに基づく情報 の組織化方法が重要である。OCLC (Online Computer Library Center)が中心となって、 Dublin Core Metadata Element Set (通称Dublin Core)と呼ぶネットワーク上の文書の ためのメタデータの標準の策定を進め、アメリカ・イギリス・オーストラリアを中心として実験が進 められている。従来の書誌記述は複雑なため、Dublin Coreは著者や編集者自身がメタデー タを記述できるように基本的な項目(以下に示す15項目)を決めている。

        Title
        Subject and Keywords
        Descriptor
        Creator or Author
        Publisher
        Contributor
        Date
        Resource Type
        Format
        Resource Identifier
        Relation
        Source
        Language
        Coverage
        Rights Management
Dublin Coreの記述方法は現在も検討中であるが、SGMLによる定義に加えてインターネッ ト上での情報発見の道具として利用できるようHTMLでの記述方法の議論を進めている。

4. 考察

ディジタル図書館の研究開発はアメリカを先頭に多くの国で活発な研究開発が進められてい る。これは、ディジタル図書館がNII(National Information Infrastructure)やGII上での 重要な応用と認められたことが大きな要因である。1993年に現われたMosaicによってインタ ーネットが「図書館のように使える」ということを我々に直観的に理解させてくれたことが最も大 きな要因であるように思える。また、Mosaicとそれに続くNetscape Navigator等による World Wide Web(WWW)の爆発的な膨張はインターネットからの情報発見(Information Discovery)という新しい分野を活発にさせたとも思える。NSF/ARPA/NASAの助成によるデ ィジタル図書館研究プロジェクトの中でも情報発見は大きなテーマになっており、Dublin Coreのようなメタデータに関する新しい動きも現われている。NSF他のDLIは1998年には 終了し、さらに大きな次のプロジェクトが始まる予定である。

本稿で示したように図書館に基盤を置くプロジェクトが多くあり、それらはNIIの時代に相応し い情報資源へのアクセス環境を提供するという点では共通しているものの、その立場は様々 である。たとえば、大学図書館の場合、増え続ける資料への対処、図書館間協力による電子 化資料の共有、利用者への距離によらない良好な情報アクセス手段の提供等の目的がある。 また、文化的・社会的財産として電子化資料を長期間保存するというアーカイブの役割を持 つ図書館にとっては、媒体変換に関する著作権、保存すべき資料の選択、装置に依存すると いう電子化資料の特性に合った保存の方法等、これから解決しなければならない問題も多く ある。さらに、情報資源の電子化が進むと利用者の情報アクセス環境の電子化も自ずと進む であろう。そうした際の図書館環境の電子化の重要性は言うまでもないが、電子化された情報 へのアクセス要求はこれまで以上に多様化し、要求される情報の粒度も小さく、より小さな単 位への情報アクセスが要求されるようになると思われる。したがって、そうした要求に答えるた めに図書館が作り出す情報アクセスのための情報(メタ情報)への要求が高まると思われる。

全般に共通する問題として、知的財産権・著作権、図書館における課金といった社会制度的 な問題もあるが、これらは時間をかけて解決されていく問題であると思われる。電子図書館に 関する著作権の問題は、ディジタル化の許諾、ディジタル化の方法とコストの負担、ディジタル 化された資料の利用条件、課金方法等いろいろな問題を含んでいる。さらに倫理的な問題、 文化の違いによる問題等、これからもさまざまな問題が現れると考えられる[49]。

従来の印刷物の図書や資料の場合、「もの」としての価値とそれらの内容が持つ「情報」として の価値がこれまでは一体として扱われてきた。図書館において資料をディジタル化して提供 することで「情報」へのアクセス性が飛躍的に高まる一方、「もの」としての資料へのアクセス性 は基本的に変化しない。また、情報へのアクセス性が高まることと「もの」としての経済的価値と は必ずしも結び付かない。一方、商品としては無価値でも学術的には価値があるということが しばしばあるように、資料が持つ学術・教育あるいは文化的観点からの価値と資料の経済的 価値とは必ずしも一致しない。また、よく組織化されたコレクションの価値はそのコレクションに 含まれる個々の資料の価値の総和とは同じではない。同様にアクセスしやすいコレクションの 価値は、同じ内容であってもアクセスしづらいコレクションの価値とは同じではない。資料のデ ィジタル化にかかるコストとそれによって得られる付加的価値、資料の保存・保持のためにか かるコストとディジタル化によって得られる付加的価値と低減できる保存コストの額、というよう に経済的な面からの考察が必要である。その意味では、American MemoryやJSTORとい った大規模なディジタルコレクション、貴重書を扱うヴァージニア大学のEarly American Fiction(EAF)プロジェクト[50]等での経済的な面からの評価が重要な意味を持つと考えられ る。

資料のディジタル化は貴重書を中心に進められている。これは、保存とアクセスの両面でディ ジタル化が効果的であると期待されていることと、著作権・知的財産権に関する問題が少ない ためである。現在、学術雑誌を扱う多くのプロジェクト(たとえば、国内では学術情報センター、 奈良先端科学技術大学院大学、海外ではTULIP(既に終了)、RedSage、JSTORほか)、フ ランス国立図書館による図書のディジタル化プロジェクト、またEAFプロジェクトのように図書 館が有料で電子化資料を提供するプロジェクト等における経済モデルの実験と経験から得ら れる知見によって、著作権や知的財産権に関する問題の解決が進んでいくものと思われる。

以下に著作権に関する取扱の例としてJSTORにおける著作権の扱いを示す。
・ 最近出版されたものはディジタル化しない(Moving Wall)。たとえば、ディジタル化をしない ことにする期間(Wall)を仮に3年間とすると、JSTORがディジタル化するのは3年より以前 に出版されたものに限られる。
・ JSTORで作成するイメージは出版時と同様な高品質なものにする。
・ 永久的なライセンスとする。出版社がディジタル化の同意を破棄した場合でも、破棄以前に 契約していた図書館に対してはアーカイブの提供を続ける。
・ 出版社がディジタルイメージを所有する。
・ ディジタル化にかかるコストは全てJSTORが負担する。
・ ライセンスは非排他的(nonexclusive)である。
・ 期間は限定しない。
・ 著作権利用料は無料である(Royalty-free)。

筆者がこれまでに興味深く感じたことを以下にあげたい。
・情報処理技術(情報を処理する入れ物の技術)と図書館分野で培われた情報管理技術(情 報・コンテンツそのものに関する技術)の間のギャップ:ディジタル図書館の開発には両者の協 力が欠かせない。DLIの各プロジェクトの参加メンバーを見ると両分野からの参加していること がよくわかる。
・情報技術者の必要性:情報処理・管理の両技術にまたがった知識を持つ技術者・研究者が 重要な役割を持つと思われる。例えば、Dublin Coreメタデータはソフトウェアロボットによる データ収集と情報検索に基づく情報発見(Information Discovery)を目的としている。一方、 メタデータの議論には書誌データ、目録データの知識も必要とされる。
・Deployment:DLIでは作成したtestbedを大学内や協力関係にある高校等で実際に利用 する実験を行っている。これは技術面での問題を検討するためだけでなく、社会科学的観点 からの利用者に関する研究(User Study)を行うことを目的としている。図書館という実際的な 場を考えると、単に実験システムの試作に終わらないための重要な観点であると思われる。
・組織間の協力:NDLFに見られるようにコストをかけて作った資料の利用性を高めるには、 利用者を増やす環境作りをすることが重要である。
・電子化資料の利用性の評価:Mellon財団からの助成で進められているJSTORや Virginia大学図書館でのEarly American Fictionプロジェクトは電子化した資料が、実際 にどのように利用されるのか、また利用を進めるにはどのような経済モデルを考えればよいの かを探る目的も持っている。こうしたプロジェクトから得られる実際的な評価はこれからのディジ タル図書館の発展にとって重要であると思われる。

5.おわりに

本稿で示したように、研究主体のもの、ディジタルコレクションの開発主体のもの、あるいはイ ンターネットへのアクセスポイントとして図書館を利用しようというものなど、ディジタル図書館に 関するプロジェクトには様々なものがある。また、CD-ROM等を含む小規模なディジタルコレ クションをディジタル図書館と呼ぶものから、インターネットはディジタル図書館であるとするも のまで様々である。これらの間に共通して言えることは、メタデータと1次情報を統合した環境、 すなわち資料を検索をしてその場で読むことのできる、いわば図書館のような環境をディジタ ル情報技術を利用して実現することを目指していることである。また、計算機科学分野で培わ れてきた情報処理技術(情報を処理する入れ物の技術)と図書館分野で培われた情報管理 技術(情報・コンテンツそのものに関する技術)という、これまでは関連が深いにもかかわらず 十分にはつながってはいなかった感のする両分野の融合が進み、入れ物と中身の両方を扱う という本来の意味での情報技術を発展させる場としてのディジタル図書館は重要な役割を持 つと思える。

参考文献

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[33] カーネギーメロン大学 (Carnegie Mellon University), http://www.informedia.cs.cmu.edu/
[34] ミシガン大学 (University of Michigan Library), http://www.si.umich.edu/UMDL/
[35] イリノイ大学 アーバナシャンペイン校 (University of Illinois, Urbana-Champaign), http://dli.grainger.uiuc.edu/
[36] カリフォルニア大学 バークレー校 (University of California, Berkeley), http://elib.cs.berkeley.edu/
[37] スタンフォード大学 (Stanford University), http://walrus.stanford.edu/diglib/
[38] カリフォルニア大学 サンタバーバラ校 (University of California, Santa Babara), http://alexandria.sdc.ucsb.edu/
[39] InFoPeople: Internet for People , http://www.lib.berkeley.edu:8000/ (InFoPeopleのホームページ)
[40] The Michigan Electronic Library, http://mel.lib.mi.us/ (Michigan Electronic Library のホームページ)
[41] Los Angeles Public Library, http://www.lapl.org/ (Los Angeles Public Libraryの ホームページ)
[42] Berkeley Public Library, http://www.ci.berkeley.ca.us/bpl/ (Berkeley Public Libraryのホームページ)
[43] St. Joseph County Public Library, http://sjcpl.lib.in.us/ (St. Joseph County Public Libraryのホームページ)
[44] The Internet Public Library, http://www.ipl.org/ (Internet Public Library のホ ームページ)
[45] CNRI homepage: Welcome to The Corporation for National Research Initiatives, http://www.cnri.reston.va.us/ (CNRIのホームページ)
[46] D-lib Magazine, http://www.dlib.org/ (D-lib magazineのホームページ, 最新号なら びにバックナンバーにアクセスできる。)
[47] Metadata from the Networks Research Group at Loughborough, http://www.roads.lut.ac.uk/Metadata/ (Dublin Coreに関する資料)
[48] The Dublin Core Metadata Element Set Home Page , http://www.oclc.org:5046/ research/dublin_core/ (Dublin Coreのホームページ)
[49] 名和小太郎, ディジタル図書館と著作権, 情報処理, Vol.37, No.9, pp.857-860, 1996.9 (ネットワーク環境における著作権に関して書いた論文)
[50] David Seaman, Kendon Stubbs, The Electronic Archive of Early American Fiction at the University of Virginia. ディジタル図書館 No.9, pp.38-47. 1997 (ヴァ ージニア大学の初期アメリカ小説の電子テキストプロジェクトに関する論文, 電子図書館 プロジェクトの評価のための経済モデルの必要性に関して触れている。)


付録(講義時のOHP資料)


海外における電子図書館の現状

杉本重雄
図書館情報大学

目次
1. 電子図書館
2. 世界でどんなことが進められているか
3. 図書館の種類とDLへのアプローチ
4. 資料のディジタル化
5. 著作権・知的財産権
6. 例
・アメリカ議会図書館
・ミシガン大学
・JSTOR
・Michigan Electronic Library
7. 研究開発
8. 情報発見(Information Discovery)
9. メタデータ
10. Dublin Core
11. おわりに


電子図書館

・情報基盤上での図書館
  Global Information Infrastructure (GII)
  National Information Infrastructure (NII)
・ディジタル化した資料・情報の提供

ディジタル図書館
電子図書館
仮想図書館
Digital Library
Electronic Library
Virtual Library
・・・

最近はDLが広く用いられている。


世界でどんなことが進められているか

アメリカ
  議会図書館
  大学図書館
  研究開発
      NSF/NASA/ARPAのDLI (Digital Library Initiative)
      DLI II (1998.10-, Multiple Agency)
  National Digital Library Federation

ヨーロッパ
  国立図書館
  eLib プログラム(イギリス)
  ERCIM (European Research Consortium on Informatics and Mathematics)
     その他

日本   学術情報センター
  奈良先端科学技術大学院大学
  情報処理振興事業協会(IPA)/国立国会図書館(NDL)
  日本情報処理開発協会(JIPDEC)/情報処理振興事業協会(IPA)

そのほか
  シンガポール

G7
  GII上での重要な応用分野 図書館、博物館・美術館


図書館の種類とDLへのアプローチ

・国立図書館
  大規摸な資料のディジタル化プロジェクト
  政府関係資料の提供(議会、法律、行政情報)

・大学図書館
  多様
  資料のディジタル化プロジェクト
  雑誌記事の提供(ドキュメントデリバリ)
  電子テキスト
  大学が発信する情報のゲートウェイ
      etc.
  新しい図書館
   ミシガン大学 Media Union
       情報を創造する場

・公共図書館
  地域住民のための情報アクセス支援
      インターネットアクセス
      ディジタル情報の蓄積・提供
  地域情報の提供
      地方自治体、地域の情報


資料のディジタル化

・保存とアクセス(Preservation and Access)
  資料の保存のためにディジタル化して記録する
  資料を直接触れなくてもアクセスできるようにする
  どこからでも資料にアクセスできるようにする
  だれでも資料にアクセスできるようにする

・アーカイブ
  保存資料へのアクセス性
  出版と流通経路の変化(電子出版物、政府・自治体の資料)
  電子出版物の問題
       長期保存方法
       保存対象の選択
       ハイパーテキスト

・長期間の保存
  技術が常に変化する
  メディアの寿命
       資料のmigration


著作権・知的財産権

・基本的な問題
・Case-by-case
  Pay-per-View
  License
・経済モデル
  これまでも利用者は必ずしも無料では利用していない
   図書館までの旅費
   複写費
  合理的なモデルを探る


例  ホームページより

・アメリカ議会図書館
   Library of Congress, USA: http://www.loc.gov/
   American Memory: http://lcweb2.loc.gov/
・ミシガン大学
   Univ. of Michigan Library: http://www.lib.umich.edu/
   Media Union: http://www.ummu.umich.edu/
・JSTOR
   JSTOR homepage: http://www.jstor.org/
・Michigan Electronic Library
   MEL homepage: http://mel.lib.mi.us/


研究開発 - Digital Library Initiative
   (http://dli.grainger.uiuc.edu/national.htm)

NSF/NASA/ARPAの共同による研究助成
   1994 - 1998
   2300万ドル
   同額もしくはそれ以上の額(「もの」の寄付を含む)を産業界から
   1998年からDLI II (http://www.si.umich.edu/SantaFe/)

カーネギーメロン大学(CMU):
   Informedia Interactive On-line Video Digital Library
   マルチメディア、認識技術
ミシガン大学(University of Michigan):
   The University of Michigan Digital Library (UMDL)
   多様な資料を幅広く多様な利用者に
イリノイ大学アーバナ・シャンペイン校(UIUC):
   Interspace
   雑誌論文のSGML全文データベース、巨大なテキストデータの空間から所望の情報
カリフォルニア大学バークレイ校(UCB):
   Electronic Environmental Library
   大量で多様な環境情報(航空写真、環境データ等)
   専門家から一般利用者まで
スタンフォード大学:
   Stanford Integrated Digital Library Project
   仮想的なひとつの図書館とする環境
カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB):
   Alexandria Digital Library
   地図や航空写真などの空間的・地理的な情報、相互利用性


情報発見(Information Discovery)

研究プロジェクトにおけるキーワード

非常に大規摸な情報空間の中から所望の情報(あるいは情報資源)を見つけだすこと

研究開発の中心的課題
  新しい情報技術としての関心・必要性
  大規摸なコレクション上での必要性


メタデータ

データ(情報)に関するデータ(情報)
    2次情報、高次情報
    情報資源に関する情報

電子図書館
    1次情報のコレクション
    情報の量が多くなる
    Interoperability (相互利用性)
    メタデータの必要性

ネットワーク上での情報発見
    yahoo or AltaVista
    メタデータ無しでは考えられない
    インターネット上の情報サービス
    著者自身がメタデータを書くことの必要性
        Dublin Core


Dublin Core
   (http://www.oclc.org:5046/research/dublin_core/)

1995年3月 OCLCとNCSAの主催で開催したワークショップでの提案
      インターネット(を含む色々なディジタル情報資源)上のデータに関するメタデータ
      基本的な要素のみを決める

1996年3月 イギリスのWarwickで第2回ワークショップ
      SGMLを用いた基本的なシンタックスの提案(Warwick Framework)
         Container Architecture
         13 elements

1996年9月 第3回ワークショップ
      イメージデータに関する議論

1996年12月 15 elements (Description, Rights Management)

1997年3月 キャンベラで第4回ワークショップ
      エレメントの定義および記述方法に関する議論(HTMLとの関連)
      Canbera Qualifier
        Scheme, Type, Language

1997年10月 第5回ワークショップ(予定)
      ヘルシンキ


Dublin Core エレメント
(1) タイトル(Title): オブジェクトの名前
(2) 作者または著者(Author or Creator): 情報資源の内容に関して責任を持つ人(複数可)
(3) 主題およびキーワード(Subject and Keywords): 情報資源に述べられたトピック
(4) 記述(Description): アブストラクトやイメージデータの説明など内容に関する記述
(5) 出版者(Publisher): 情報資源を流通の形態にしたエージェント
(6) 他の関与者(Other Contributors): 編集者や翻訳者等文書の内容の作成に関わった人
(7) 日付(Date): 出版の日付
(8) 情報資源タイプ(Resource Type): 小説、詩、辞書といった情報資源のジャンル
(9) 形式(Form): PostscriptファイルやWindows実行形式といった、情報資源の物理的な形式
(10) 情報資源識別子(Resource Identifier): 情報資源を一意に識別するための番号あるいは名前
(11) ソース(Source): 情報資源オブジェクトの出所となった情報資源(印刷物あるいはディジタルデータ)
(12) 言語(Language): 情報資源の内容を記述している言語
(13) 関係(Relation): 他の情報資源オブジェクトとの関連づけ
(14) カバレッジ(Coverage): 地理的場所や時間的な内容に関する情報資源の特性
(15) 権利管理(Rights Management):著作権記述などの権利に関する記述や利用条件に関する記述へのリンク(URLもしくは何らかのURI)。

Example: http://www.oclc.org:5046/research/dublin_core/
  (View Source.)

おわりに

電子図書館
  情報基盤上での情報の蓄積・提供・アクセス
  新しい情報技術の必要性

現状
  資料のディジタル化を中心とするプロジェクト
      保存とアクセス
      アーカイブ
      資料の共有(トータルコストの低減)
  情報アクセス支援

  大規摸情報空間の中での情報の組織化、情報発見・検索のための情報技術研究開発

将来
  世界規模での情報の共有のための電子図書館のネットワーク
      Interoperability
      Metadata
      Intellectual Property Right
      User Issues
      Multi-linguality