4.5 大学図書館における学術情報システムの実際
  −東京大学附属図書館での現状紹介を中心に−

               東京大学附属図書館総務課専門員  松下彰良


1.東京大学をとりまく環境の変化(特に情報環境)

       ・インターネットのインパクト
      研究者や学生がインターネット(特にWWWや電子メール)を日常的に使い始めた。
       → 学術情報流通環境の激変
    ・開かれた図書館への要請(生涯学習社会への対応等)
    → ネットワーク経由であれば公開しやすい。インタネットであれば費用が安くてすむ。
    ・情報の海外への提供の要請(国際化)
       ・大学改革への対応

2.東京大学における研究教育環境・情報環境の変化

 ・学内LAN(UTnet2)の整備とインターネット等情報利用環境の整備
    ・駒場における情報処理教育の必修化 → 今後は、マルチメディアとネットワークを使っ
   た講義等、教育における情報技術の活用が進むと予想される。
    ・3極構造化 → 柏地区に図書館・計算機センタ−・博物館等の機能を融合化させた「メ
   ディアテック(仮称)」ができる予定。
   ──────────────────────────────────────      
 ・東京大学の教育研究活動に密接に結びついた図書館情報サービス(研究教育支援機能)の強 
   化の必要性
    ・統合化された情報サービスへの要望
   ──────────────────────────────────────      
    (対応策)
 ・予算・人的資源の問題
    附属図書館(総合図書館+部局図書館・室)の予算及び人的資源だけでは限界がある。
      附属図書館(総合図書館+部局図書館)、大型計算機センター、教育計算機センター、
    総合研究博物館、その他、学内の情報関連機関との連携の重要性・必要性
       ↓
    ・図書行政商議会のもとに設置された「附属図書館学術情報システム特別委員会」等で学内
   情報関連機関と附属図書館との連携のあり方について検討中

3.学術情報システム、NACSIS、大学図書館

 個々の大学(図書館)における学術情報システムは、学術情報システム全体および学術情報セン
ターとの密接な関連のもとに考える必要がある。

┌────────────────────────────────────────┐  
│ 学術情報センター                大 学 図 書 館                         │  
│                         業 務  面              サービス面                 │  
│NACSIS      │                                                            │  
│ −CAT(全国大学│ 蔵書目録DBの形成  │ OPAC                           │  
│   図書館総合目録)│                      │                                    │  
│ −ILL         │ 相互利用・相互協力   │ 相互貸借(国公私、海外)           │  
│                  │                      │ DDS(現物、電子的)             │  
│ −IR          │ レファレンスサービス │ 文献調査                           │  
│                  │                 │ 各種DBサービス                   │  
│                  │                   │  CD-ROM、学内作成DB、その他         │  
│ −Mail       │ 大学個別のメールサー │ NACSIS-Mailは全国の大学の教職員・  │  
│                  │ バーの構築           │ 院生等が利用可能。                 │  
│─────────┼───────────┼────────────────    │  
│ −ELS         │ 電子図書館サービス   │ WWW等によるサービスの統合化     │  
│                  │ マルチメディア       │ WEB-OPAC、各種DB、オンラインジャ−   │  
│                  │                      │ ナル、利用案内、学外(特にインター   │  
│                  │                      │ ネット上)の情報へのナビゲート機    │  
│                                             能その他                           │  
│──────────────────────────────────────    │  
│      学 術 情 報 シ ス テ ム                           │  
│ SINET(インターネット・バックボーン)+ 学内LAN + インタネット    │  
└────────────────────────────────────────┘  

4.東京大学附属図書館の学術情報システムの現状

    ●62の図書館・室(総合図書館と63部局図書館・室)
    ・業務システム(資料管理、目録、閲覧、ILLローカルシステム、学情接続等)
     *資料管理及び閲覧サブシステム等は一部の部局でのみ稼働
    ・情報サービスシステム
    ・事務のシステム(1人1台、電子メールの活用)
   *会計事務以外、図書館事務の電算化は、大部分未実施(物品管理、人事等)
  ●運用調整班とシステム管理掛(=現状3名)

 A.システムの現状
                    ┌─────────┐                                            
                    │ リプレース前のシステム │                                            
                    │(図書館専用計算機)│                                            
                    │ ホスト+専用端末  │                                            
                    └─────────┘                                            
                      ┌────────┐リプレース                                  
      ────────┤  現行システム  ├───────────                      
                      │ まだ Biblion │図書館業務システムの大型計算機センターへの移行  
                      └────────┘                                            
                      ┌────────┐ 大型計算機センターと連携しつつ、汎用機中   
                      │ 分散システム  │ 心のシステムからUNIXワークステーショ   
                      └────────┘ ン中心の分散システムに移行(予定)           
                                           
 B.情報サービスの現状

┌────────────────────────────────────────┐  
│                         東 京 大 学 附 属 図 書 館                 │  
│・東京大学総合目録│・OPAC(インタネットへ公開)                            │  
│                  │  要WEB-OPACの開発                                         │  
│・ILL          │・センターシステムとローカルシステム                        │  
│                  │  要ILL参加部局(受付館)の拡大                          │  
│                  │・ドキュメントデリバリー(現物、電子的)→ Ariel等の試行   │  
│・レファレンス・情報サービス│・電子メールを使った参考質問受付回答サービス                │  
│                  │・サービスDBの拡充(CD-ROM、学位、目次速報、EESその他)      │  
│・電子メール等    │・総合図書館メールサーバ → 附属図書館メールサーバ構築へ  │  
│─────────┼──────────────────────────────│  
│・電子図書館サービス │ WWW等を利用した情報サービスの統合化、オンラインジャーナル  │  
│                 │ マルチメディア広報・展示,WHOミラーサーバ、その他           │  
│                  │ 学外(特にインタネット上)の情報へのナビゲート機能         │  
│────────────────────────────────────────│  
│★情報利用環境(メディアプラザ、情報コンセント整備、教育用計算機センター端末他)│  
└────────────────────────────────────────┘  

5.課題

 1.現行図書館情報システムの改善

      ・分散システムの導入
      ・情報サービスの統合化
   ・よりユーザーフレンドリーなシステムを(利用者が求める情報に容易にアクセ
    ス可能な共通インターフェースの提供)
      ・国際標準(例:ANSI−Z39.50)

 2.電子化への対応

   大学図書館においては、現在、「電子図書館的機能の強化」が最重要課題の一つ
  となっている。東京大学附属図書館でも、附属図書館の将来計画に関する全学的な
  検討に呼応して、図書館の組織・運営での抜本的改善の方策を探るべく、鋭意検討
  を行っている。電子化の課題としては以下のようなものがあげられる。

  (1) 電子化の体制
     ・組織、予算、要員
     電子情報サービス掛新設の必要性等
 (2) OPAC
    ・検索システムとユーザインタフェース(WEB-OPAC)
    ・遡及入力
  (3) 外部電子情報資料の利用
       ・大学図書館サーバ、大学図書館共同サーバ
     高額DB等の共同サーバでの提供
 (4) 資料の電子化
    ・図書館所蔵印刷資料の電子化 
    ・新規電子化(例:電子教材の作成)
 (5) 電子情報資料利用環境の整備(特に学生用)
 (6) ILLシステム
       ・ドキュメントデリバリ−サービスの改善(Ariel等)
 (7) その他 
   ・広報(利用案内及び学内外への広報)
   ・電子図書館(サービス)と著作権、情報利用コスト