2.2 学内LANを利用した情報提供サービス

               東京工業大学附属図書館情報サービス課長  福田博同


はじめに
インターネットを活用した情報発進の世界は分進秒歩の世界である。
各大学の学内LAN(用語1)とインターネットを活用した情報発信の状況を5月1日現在で調査したが、印刷物発行のタイムラグは大きく、最新情報はWWW(用語2)上で発信する。
当講義は3種類の形態で公表される。
一つは冊子体、一つはフレーム(用語3)に対応していないブラウザ(用語4)のためで、図書館情報大学の「長期研修講義録」に、もう一つはJavaScript(用語5)を活用したインタラクティブなもので、筆者のホームページ(http://www.libra.titech.ac.jp/~hiroatsu/artnavi.htm)に掲載する。
冊子体における個別例のURL(用語6)については、注以外は記載しないが、Web(用語7)上では当該文字をクリック(用語8)するとリンクされる。

1 インターネットの時代
1.1 インターネット利用人口の推移
  ・ インターネット普及率調査:1997年4月18日日経産業新聞記事(注1)によると
     ・ 国内ユーザ700万人

  ・ インターネットアクティブユーザ調査:日経マルチメディア調査(注2)によると
    ・着実に増える家庭からのアクセス
     1995年12月 34.5% >> 1996.12月 46.6%

  ・ Windows95特集期間中のWeb調査の各1位(注3)によると
    ・ 利用ブラウザは----Netscap Navigator 3.x (42.8%)
     インストール済みブラウザは----MS-IE 3.x (43.7%)
     電子メールソフトは----MS-IE Internet Mail (48%)
     接続速度は----アナログ28.8Kbps (52.6%)
     パソコンOS(用語9)は----Windows95 (83.5%)
     メモリー容量(用語10)は----32-48MB (41.4%)

1.2 インターネットでできること
 ・TELNET(用語11)(引用:東工大)
 ・電子メール (引用:東工大)
 ・電子掲示板(引用:早稲田大学)
 ・ファイル転送[FTP] (用語12) (引用:千葉大)
 ・gopher(用語13) (引用:東工大)
 ・WWW

1.2.2 Webの進化
「インターネットは単なる一個人が全世界を相手としたメディアクリエイターになれる仕組みである」とも言えるようになった。
 ・ インターネット会議(NetMeeting他)
 ・ インターネット電話(他)
 ・ インターネットラジオ(Real Player他)
 ・ インターネット放送(Marinba他)
 ・ インターネットビデオ(Schock Wave, Real Player他)
 ・ インターネット出版(Web出版,電子メールジャーナル)

1.3 インターネットの歴史
 ・ 1969年 ARPANET(Advanced Research Projects Agency)(用語14)が原型
 ・ 1984年 NSFNET(National Science Foundation)(用語15)を構築。
 ・    JUNET(Japan Unix Network, 1984- )(用語16)が発祥
 ・ 1985年 ARPANETとNSFNET接続。(注4)
 ・ 1988年 Junetが WIDE(用語17)に発展
 ・ 1989年 CERN(用語18)、WWW を開発。
 ・ 1992年 学術情報センターのSINET(用語19) 、WIDEと接続
 ・     WIDE,ニフティ(用語20),PC-VAN(用語21)の接続開始(注5)
 ・ 1994年 標準的WWWブラウザMosaic(用語22)からNetscape(用語23)
 ・     インターネット関連雑誌発行(注6)
 ・     商用プロバイダ(用語24)の接続、活発・
 ・ 1995年 Javaの開発(用語25)
 ・ 1996年 ActiveXの開発(用語26)
 ・     -->文化としてのインターネット

2  大学図書館の電子化:電子図書館化
2.1 電子化の流れ
 ・ 1971年頃----図書館業務の電算化(注7)
 ・ 1977年頃----オンライン情報検索(用語27)の流行
 ・ 1985年------学術情報センター共同目録開始(注8)
 ・ 1986年頃----CD-ROMの普及(用語28)
 ・ 1992年------学術情報センター ILL(用語29)の開始
 ・ 1993年頃----電子メールの普及(注9)
 ・       UNIX(用語30)図書館システムの導入(注10)
 ・       インターネットによるOPAC(用語31)開始(注11)
 ・ 1995年頃----WWW版によるホームページ公開(注12)
 ・       奈良先端科学技術大学院大学に電子図書館経費(注13)
 ・ 1996年頃----オンラインジャーナル(用語32)の普及・
 ・ 1997年------学術情報センターWebcat(用語33)の実験的試行/電子図書館サービス開始(注14)
 ・ 今後--------新CAT(用語34) 電子図書館(注15) グループウェア(用語35)

2.2 電子図書館構想の流れ
 ・ Dowlinの電子図書館構想(用語36)


<図1 Dowlinの電子図書館構想図>

 ・ 郵政省の電子図書館構想 (用語37)
     1985年1月光ファイバー網(用語38)と画像データベース(用語39)


<図2 郵政省/出版社の電子図書館構想図>

 ・ EL研究会の電子図書館構想(用語40):1985年10月。同様な計画
 ・ 学術情報センターの電子図書館構想(用語41)
 ・ 国会図書館の電子図書館構想(用語42)
 ・ 各大学の電子図書館構想 (用語43)

2.3 電子図書館の機能
 ・ 時間空間を超え簡便に学術情報を得られる仕組み
     ・ 24時間運用
     ・ 職場/自宅/海/山


<図3 時間空間超越>

 ・ 簡便な情報検索機能/原情報提供機能(用語44)
     ・ タッチパネル(用語45)で応答式で原情報まで検索


<図4 電子図書館の諸機能>

 ・ ユーザ応答/教育機能
     ・ 質問回答が可能
     ・ やさしいガイド付き
 ・ 電子資料蓄積設備/デジタル化設備
 ・ 電子資料閲覧設備/複製/放送設備

3 学内LAN/インターネットを通じて提供する情報
3.1 情報の種類
  1)案内類図書館報概要ニュース
  2)利用教育文献の探し方 機器の使い方 FAQ(用語46)
  3)検索 OPAC 目次情報 コレクション等(用語47)
  4)解題類(用語48) 展示資料 コレクション等推薦図書(用語49) 教官著作等
  5)原文情報 古文書等 Online Journal館員研究成果
  6)大学情報 研究者情報 研究成果 シラバス(用語50) 生協
  7)予約等 部屋図書発注貸出 複写
  8)リンク情報(用語51)検索エンジン(用語52) 学問分野別情報出版マスコミ情報ML(用語53)

3.2 情報発信状況
3.2.1 国立大学の実施状況(1996.3.31,Web上では1997.3.31を収録予定)


<図5 学内LANによる情報発信:国立大学)

3.2.2 国公私立別 CD-ROM 情報の実施状況(1996.3.31,Web上では1997.3.31を予定)


<図6 CD-ROM資料数の推移:全国大学>

3.3 ボランティア的活動の例
    1)案内類:
         Web一覧:筑波大東工大慶大上田教授筆者ほか
         全国の大学図書館報:図情大
         国大図協関連ニュース(用語54):東大図情大東工大島根大ほか
         図書館関連情報:筑波大千葉大東工大ほか

    2)利用教育/参考業務:
         利用教育:Webの作り方長期研修講義等資料の探し方
         レファレンス:Virtual Library(用語55)DDC-NDC変換表岡山人物情報

    3)検索:
          OPAC:NACSIS-WebcatOPAC一覧:農林研究情報センター林氏慶大上田教授ほか
         雑誌等目次情報:学術情報センター目次速報長岡技大:高専へ

    4)相互協力:          代理サーバ(用語56):学情セ
         メーリングリスト:福井大

3.4 個別例の一部(主に国立大学で、最新情報はWeb上に記載する)
    1)案内類:
         図書館案内(全国大学)
         図書館報(国立大学の約30%)
         図書館概要(全国大学の約10%)
         図書館ニュース(全国大学)

    2)利用教育:
         レファレンス:筑波大千葉大福井大学ほか
         マニュアル類:金沢大等CD-ROMサービス実施の大学ほか
         FAQ:筑波大図情大農工大新潟大富大福井大兵教大ほか
         HTML教室:埼玉大Far教授筆者ほか
         Java教室:岡谷工高河西先生慶大武田先生稚北短大安藤幸央氏ほか
         JavaScript教室:川崎幸一氏ほか
         情報検索入門:富山医薬大ほか

    3)検索
         OPAC:NACSIS-Webcat農林研究情報センター林氏九大ほか
         新着図書情報:北教大室蘭工大北見工大山形大ほか
         雑誌目次情報:北大東北大筑波大千葉大 東大東工大長岡技科大浜医大九大大分大ほか
         特定資料目次情報:コレクション目録:東大東大史料編纂所東工大ほか
         学内紀要研究業績目次情報:北見工大学芸大電通大鳥取大ほか
         網羅的大学紀要目録:上越教育大ほか
         修士/博士論文目次情報:学芸大上越教育大ほか
         教官著作リスト:農工大ほか
         学生用図書リスト:学芸大浜松医大ほか

    4)解題類の作成と検索
         コレクション等:北大筑波大東大新潟大 富山大京大神戸大(震災文庫)奈良女大
         岡山大愛媛大高知大学長崎大琉大ほか
         教員選定図書解題:千葉大ほか 読書案内:学芸大ほか

    5)原文情報
         古文書等:北大筑波大新潟大京大 奈良女大琉球大ほか
         Online Journal:東工大富山医薬大北陸先端大宮崎医大ほか
         学位論文作成:北陸先端大ほか
         館員研究成果:学術情報センター東工大ほか

    6)大学情報
         研究者情報:学情センター
         研究成果:修士論文(上越教育大)学位論文(東大ほか)
         シラバス:浜松医大ほか
         特定分野情報:広島大大分医大ほか 生協:北大東北大ほか

    7)インタラクティブ(用語57)予約等
         セミナー室等
         図書発注:一橋大新潟大兵教大奈良先端ほか
         貸出:新潟大ほか
         複写申込:奈良先端ほか          図書利用状況問合せ:奈良先端ほか
         掲示板:熊本大ほか
         図書館ギャラリー:宮崎医科大ほか

    8)リンク情報
         Web一覧:筑波大東工大慶大上田教授筆者ほか
         検索エンジン集:各大学筆者ほか
         学問分野別情報:東大福井医大ほか
         地域情報:北大筑波大福井大ほか
         出版マスコミ情報:秋田大東工大ほか
         Mailing List:福井大多摩大ほか     *なお、本事例に掲載されていない大学図書館は積極的にメーリングリスト「かりん」(http://karin30.flib.fukui-u.ac.jp/howtoml.html)に投稿されたい。

4 東工大における活用事例
4.1 プロジェクトの目標と組織
 目標:情報検索から原文献入手までを研究者の手元の端末で行えること


<図7 プロジェクトの目標>

 組織:平成元年プロジェクト開始,平成7年プロジェクト改組,平成8年プロジェクト改組


<図8 電子図書館プロジェクト>

4.2 CDサーバ(用語58)での情報提供
4.2.1 情報の種類


<図9 最近3年間のCD-ROM情報提供>

4.2.2 概念図


<図10 サーバによるCD-ROM情報提供概念図>

4.3 オンラインジャーナル


<図11 オンラインジャーナルのページ>

4.4 データベース作成

<図12 データベース作成方法の図>

4.5 ドキュメントデリバリー(用語59)
    :Ariel(用語60)の実験
    Arielは米国/カナダ/オーストラリア約1000の大学図書館間で行われている電子的文献電送システム
    論文情報検索>雑誌名所蔵検索>Web複写依頼>OCR入力>FTP&Email電送>再利用


<図13 Ariel概念図>

5 電子図書館推進の課題
5.1 情報通信基盤の整備


<図14 ネットワーク渋滞の図>

    ・ ネット間の帯域が狭い 14Kbps < 28Kbps < 64k-ISDN(用語61) < CATV(用語62)
    ・ 100校プロジェクト(用語63) < 情報スーパーハイウェイ(用語64)
5.2 ネットワークの著作権処理
    1.著作権法第1条: 目的は文化の発展=人格権の尊重、意欲のための経済権の保証、31条等の権利制限
    2.インターネット: ボランティアによる文化の発展=人格権の尊重、意欲のための経済権
     の放棄もしくは最低限の保証
    3.インターネット: 誰でも放送局・ 出版社・ ・ 著作権者=受益者
    4.Ariel: 米州では公正使用の範囲で合法。彼我の学術情報収集能力の差は拡大

5.3 データベース作成体制の強化
    1.各分野の日本語による基礎資料のデータベース化
    2.官民共同プロジェクト[学術情報センター、国会図書館、大学、大学図書館、文化庁、
     科学技術庁、郵政省、通産省、マスメディア、出版社、コンピュータ会社等]のデータ
     ベース作成機関の設立が必要

5.4 教育分野全体のマルチメディア化/ネットワーク化
    1.全学校へWWWによる授業が可能なように
    2.全大学の初等情報教育の推進=慶応義塾大学湘南藤沢メディアセンター化(用語65)を!
    3.マルチメディア教材作成体制の強化を
                                        以上