4.4 学術情報センターの活動

       学術情報センター研究開発部長  小野 欽司 

  
1.はじめに

 学術情報センターは、研究者が必要とする学術情報を電子的に蓄積し、学術情
報ネットワークを通じて迅速、的確に提供するための学術情報システムを構築、
運用している。
 センターの設立に際しては、世界に類をみない学術情報システムの構築をかか
げ、現在のシステムをつくりあげた。

2.学術情報ネットワークの現状

 昭和61年度から全国的な学術情報ネットワークの整備に着手し、現在ではパ
ケット交換網に加えてTCP/IPにもとづくインターネット・バックボーン (SINET)
および、さらに高速のATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)
によるバックボーンネットワークを構成している。SINETは、主として全国の大
学等を接続する我が国最大の学術情報ネットワークとなっている。
 また、学術情報センター内に他のネットワークとの相互接続の交換点として
JIX(Japan Internet eXchange)を設け、国内の他のインターネット、たとえ
ば、IMnetやJOIN、WIDEネットワークと相互接続して全国規模の学術研究ネット
ワークを形成している。
 このように、ネットワークの拡充も順調に進み、現在全国の500近い大学等
を学術情報センターの学術情報ネットワークに接続し、各種のサービスを提供し
ている。近年利用者が急増しているインターネット・バックボーン(SINET) 
には、ATM方式による交換の機能強化を行うとともに、回線速度を50Mbpsに
増強した。
 現在日米間の回線は6Mbit/secで、米国経由でヨーロッパへ接続されているが
この夏から2Mbpsに増速される予定である。英国内の研究ネットワークである
JANET(Joint Academic Network)を経由して4研究図書館 (Cambridge, Oxford,
Sheffield, Stirlingの各大学図書館)と接続し、英国内の日本語資料の総合目録
を作るサービスに利用されている。
 また平成7年9月にはアジアで初めてタイのバンコックとの間に2Mbit/secで
インターネットの直接接続がなされアジア太平洋地域との学術情報交流の足掛か
りをえた。さらに、省際ネットワーク(IMnet)や他の研究ネットワークとの相互
接続も行っており、それぞれのネットワークの利用者の間で情報共有しながら、
新しい研究を進めることができる。
3.学術情報コンピュータシステムの現状

 学術情報センターのコンピュータシステムはこれまでメインフレームのシステ
ムとして個々のサービスに対応した運用がされてきた。
 しかし、最近の分散処理とオープンシステム化に対応して、センターシステム
のオープン化を一部実現した。
 総合的な学術情報の中枢センターとして、引き続き、新規サービスの開拓とそ
れに密接に関連して研究を進めて行く予定である。

4.サービスの現状

 目録所在情報(NACSIS-CAT)サービスは、1996年には、目録システムにオン
ライン接続されている大学等は400機関を越え、登録件数も2000万件を越
えている。
 ILLには昨年度中に236機関を通じて50万件を超える利用があり、英国
図書館原報提供センター(BLDSC)へ転送するサービスも行っている。また、
国立国会図書館との協力体制を整備し、ゲートウエイ機能によって増大する国内
・国外の利用機関に対応していく予定である。

 情報検索サービス(NACSIS−IR)は、現在約50種のデータベースの
検索サービスを行っている。NACSIS−IRの利用者は大学等の研究者のみ
ならず、日本学術会議に登録された学協会の会員に対し、その所属先を問わずに
広く開放している。
 さらに、日本科学技術情報センターとのゲートウエイ機能によって相互のデー
タベース利用が可能になり一層利用価値が高くなった。現在新システム移行の準
備を進めており、利用者にとって使い易く、価値の高い情報提供ができるように
なる。
 なお、平成5年1月から学術情報センターのサービスである情報検索システム
と目録情報システムにインターネットからのアクセスを可能とした。

 また、来年度の開始を目標に、電子図書館サービスの実現を目刺し、現在試行
評価中である。
 一方、全文検索は電子図書館とも密接に関連するため、将来のサービス形態も
ふくめ検討をすすめている。

5.研究開発活動

 研究開発活動も強力に推進されている。試行サービス中の電子図書館サービス
は研究開発の成果を踏まえて、平成9年度から事業化することを目指して準備し
ている。
 新しい情報環境に対応するため、文部省科学研究費の新プログラムの一つとし
て、「学術支援のための超高速通信網の研究開発」を進めている。これらは米国
をはじめ欧州各国において急速に研究開発が進められている「ギガビット・ネッ
トワーク」に対応するシステムで、その成果を学術情報ネットワークの次期整備
に活かす方針である。

6.教育研修活動

 教育研修活動では、センターとの接続機関の増大や利用者のニーズに応えるた
め年々充実を図ってきたが、1995年4月に教育研修部が新設され、教育研修
事業を推進するための基盤が整えられた。教育研修においては、当センターが提
供する各種のサービスに係わる研修・講習会を充実させるだけでなく、各大学・
研究機関等から要望の高い学術情報システムの構築・運用を担う人材を養成する
プログラムも開始した。

7.むすび

 我が国の学術情報基盤を支えるため、学術情報センターは、今後とも創設時の
理念に照らして事業の発展に努めると共に、新たな学術情報環境に対応すべく研
究開発にも一層の力を注ぐ考えである。