21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について (答 申)
                 平成4年7月23日
                   学術審議会
                 ( 抜 粋 )


6 学術研究情報流通体制の整備
〔基本的方向〕
  近年,学術研究の進展に伴い,学術情報の量的増大・質的多様化が急速に進んでおり,独創的
 ・先端的な学術研究を生み出すための基盤として,研究者が必要とする学術情報を迅速・的確に
 提供し,研究成果を国内外に普及するための体制整備はますます重要な課題となっている。
  特に,今日では,コンピュータ及びコミュニケーション技術の進展と普及に伴い,学術研究活
 動における情報ネットワークは不可欠なものとなっている。このため,情報ネットワークを安定
 して運営・管理するための体制を整備するとともにその高度化を図ることが重要となっている。
 さらに,より広域で高度な学術研究活動を促進し,情報資源を有効に活用するために,国内の他
 機関あるいは外国の学術研究情報ネットワークとの連携を図ることが求められている。
  大学図書館は,一次情報の収集・提供等により情報サービスを行う機関として重要な役割を果
 たしているが,情報化等の新しいニーズの高まりに対応し,その広範な情報資源の有効利用を進
 めていくため,今後は,キャンパス情報ネットワーク(学内LAN)における情報提供の中核と
 しての図書館及び大学図書館間協力の一層の促進という考え方を基本に,その機能の強化に努め
 める必要がある。
〔必要な方策〕
(1) 学術研究情報ネットワークの高度化・国際化
    基幹ネットワークとしての役割を持つ学術情報センターの情報ネットワークについては,学内
 LANの相互接続の必要性も踏まえ,通信回線の高速化を図るとともに,安定運用のため関係機
 関の連携協力を図ることが重要である。基幹ネットワークの整備に加え,それに接続する支線網
 の整備についても配慮する必要がある。また,学内LANの整備を図るとともに,既存の学内情
 報拠点の活用や技術職員の教育・研修等により,その運用体制を強化する必要がある。さらに,
 学術研究の高度化を図るため,学術情報センターの情報ネットワークと各分野の研究者グループ
 が必要に応じ個別に構築・運用している様々な専用ネットワークとの連携協力を深める必要があ
 る。
  将来の超高速通信化に備え,学術情報センターを中心とし,関係機関の協力の下に学術研究情
 報ネットワークに係る中・長期展望について検討し,大学以外の研究者の協力も得て必要な研究
 開発を積極的に推進することが望まれる。
  現在,諸外国における学術研究情報ネットワークの充実とあいまって国際的な学術研究情報ネ
 ットワークの形成が進みつつあるが,我が国もアジア・太平洋地域のネットワークの中心として,
 このような動きに積極的に参加することが求められている。このため,関係機関の協力の下に適
 切な検討を行い,国内体制の整備に努める必要がある。


(2) 大学図書館等の機能強化
  大学図書館は,学内LANを始め学術研究情報ネットワークの積極的な活用により,本館と分
 館との連携や大学間協力を一層促進し,図書資料等の計画的な収集と大学の特色に応じた重点的
 収集に努める必要がある。現在,外国雑誌については分野別に外国雑誌センターを指定し,文献
 資料については特定分野ごとに資料センターを設置し,体系的な収集に努めているところである
 が,今後とも資料全般にわたって,分担収集・相互協力に留意しつつその整備・充実を図る必要
 がある。
  また,近年の著しいコンピュータ及びコミュニケーション技術の進展と普及に配慮して,現在
 行われている電子図書館の試みに加え,CD−ROMやビデオディスク等の電子媒体の資料の蓄
 積を推進する必要がある。さらに,蔵書の増加や図書資料の劣化の問題に対処するため,利用の
 実態を踏まえた図書資料の効果的な保存システムについて検討する必要がある。
  近年,留学生の増加や生涯学習活動の普及に伴い,大学図書館に対して,学生,特に留学生に
 配慮した学習活動の場としての機能の強化や市民への開放を求める声が高まっており,このよう
 な新しいニーズに対応したサービス機能の充実について検討する必要がある。
  このほか,情報化等の新しいニーズにこたえ,適切なサービスを提供するため,人材の確保,
 研修機会の充実等に努めるとともに,施設面における改善・充実方策についても検討する必要が
 ある。
3) データベースの充実
  学術研究の急速な発展に伴い,その結果として生み出される情報は膨大な量に上っており,学
 術研究情報の流通促進を図るためには,データベースの作成が重要な課題となっている。現在,
 データベースは年々充実が図られているが,欧米諸国に比べていまだ不十分な状態であり,我が
 国独自の多様なデータベースを早急に充実させる必要がある。その際,データベースが欠落して
 いる分野や充実する必要性の高い分野について重点的に進めることが大切である。
   また,研究者等により作成されたデータベースについては,できるだけ多数の利用者に提供で
 きるようにするため学術情報センター等の受入れ事業を充実し,公開利用の一層の促進を図る必
 要がある。