情報リテラシー授業(情報検索I,II)[報告] 『Castalia : 東京外国語大学附属図書館報』第2号(2001年9月)

 東京外国語大学では、新入生(および3年次編入生)の必修科目として、「情報リテラシー」を平成13年度から新設しました。授業の目的は、(1)コンピュータやインターネットの基礎を理解する (2)学内の情報機器の利用方法を学び、有効な情報検索を行う (3)専攻語をコンピュータで使う、の3点です。授業は1学年約800名を3クラスに分け、7月までの半期13コマ(講義および実習)で、複数の教官がリレー方式で分担しました。なお、この授業の内容をもとにした図書の刊行が予定されています。
 「情報リテラシー」の授業のうち、第8回と第9回の2コマの講義(6月12日〜21日)については、附属図書館の事務職員が担当しました。図書館に割り振られたテーマは、「情報検索法」でした。第8回は、情報検索の基礎、またはその前提となるものとして、図書館の使い方を説明しました。教員の担当した各回の内容は、主として狭義の「情報リテラシー」つまりコンピュータ・リテラシーが中心のようでしたが、そのコンテクストの中で図書館の分担する回に期待されているものは何かと考え、第9回はインターネット上での情報検索(蔵書検索、文献検索、サーチエンジン等)のコツと実例を、現場の体験に基づいて説明しました。
 近年は、情報リテラシーの向上やIT環境の整備が国の政策として推進されつつあることを背景に、全国の多くの大学で情報リテラシーの授業が開設されるようになってきました。また、授業の一部を図書館職員が担当または補助する機会も増えつつあります。日本図書館協会大学図書館部会と国公私立大学図書館協力委員会の主催する第18回大学図書館研究集会(9月13日〜14日)の第二分科会「情報リテラシーと相互協力」(発表7件のうち1件は、東京外国語大学からの事例報告)の分科会趣旨には、「情報リテラシーについて,文部省大学審議会では,平成12年11月22日答申において,「主体的に情報を収集し,分析し,判断し,創作し,発信する」能力と位置付けている。とりわけ,社会全体の生涯学習への意欲が高まる中,大学図書館が情報リテラシーの能力の向上に果たす役割はますます重要になっている。」という記述があります。
 各大学の図書館では従来から、それぞれにオリエンテーションやガイダンスを実施してきましたが、多くの場合は任意参加のため、学生の在籍者数に比してじゅうぶんな参加者数が得られない悩みがありました。必修科目の中への図書館の担当回の組み込みは、図書館の使い方や情報検索の基本を利用者全員に行き渡らせるという目標へ向けて、大きな前進といえます。
 ところで、「情報リテラシー」という用語は、狭義には、コンピュータの操作技能の習得(コンピュータ・リテラシー)を指しますが、広義には、情報を収集し、整理・加工し、自ら情報を発信するまでのあらゆる知識・技能を含みます。また、「メディア・リテラシー」という用語は、「情報リテラシー」の同義語として使用される場合もありますが、狭義には、メディアを読み解く(報道にだまされない)主体的な判断力の養成(メディア論、マスコミ、ジャーナリズム等と関連する、社会学的領域)を意味します。図書館の立場としては、「情報リテラシー」を広義で、つまり、機器の操作だけではなく、情報を主体的に発信するための基本技能としてとらえています。レポート・論文の内容面の指導は教員の領分ですが、参照文献の書き方をはじめとして、形式面のガイド/サポートを提示したいと考えています。今回の2コマの講義の時間内では、情報の発信方法についてまで言及する余裕はありませんでした。また、検索実習の時間も必要と認識しています。今後のサービスメニュー拡大と内容の充実へ向けて、順次準備していきたいと思います。
 「情報リテラシー」授業は、担当させていただいた図書館職員の側としても、広義の情報リテラシー、すなわち、情報の検索・収集、資料文書の作成、口頭発表という一連の流れを実習する場となりました。たとえば、説明用の資料に盛り込む検索例を作るために、このように入力するとこういう結果が出てくる、というつもりでいろいろ試してみると、結果が予期したものと違う場合がしばしばあり、日頃、各種検索システムを常用する業務に携わっていながらも、使い方をあまりきちんと確認せずに使用していたことに改めて気付かされることがたびたびありました。
 図書館の分担した回の説明資料は、ホームページにも公開し(http://www.tufs.ac.jp/common/library/guide/literacy/literacy.html)、日常の検索案内のガイドとしても活用しています。「情報リテラシー」授業の受講者以外の一般利用者の皆様にも役立つよう、図書館の使い方や検索の手順等について、具体的な説明を記述し、実際に使える跳び先もリンクしてありますので、ぜひご利用ください。
 ところで、一般に、ものごとを調べるには、それなりの手順、方法論があります。調べ事をするための知識・技能は、読み書き能力の延長線上にある情報リテラシーの一環として、学生や研究者に限らず(学習や研究のためだけではなく)、あらゆる人々に(日常生活や卒業後の実務、趣味・娯楽の場面でも)有用なものです。文献・情報の調べ方や図書館の使い方については、各種の手引書が刊行されていますから、適当なものを選んで目を通しておくことをお勧めします。この分野の図書は、「レファレンス」とか「参考業務」といって、NDC(日本十進分類法)の分類番号では015のあたりに配架されています。
 図書館では、「情報リテラシー」授業以外にも、利用者の皆様に図書館を有効に使っていただくための講習会を今後とも企画・実施していく予定です。実施方法や内容について、ご意見ご要望などありましたらお寄せいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
Last updated: 2001/11/19[林哲也]hayashi@tulips.tsukuba.ac.jp