教員著作紹介コメント(奈佐原 顕郎先生)

奈佐原 顕郎先生(生命環境系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『ライブ講義 : 大学1年生のための数学入門』奈佐原顕郎著.講談社, 2019.2【分類410-N55】

【コメント】

本書は, 私の愛する資源生(生物資源学類生)のために開発した「数学リメディアル教材」を, 講談社が出版してくれたものです。

 資源には, 数学は嫌いじゃないけど不得意, という人がけっこういます。しかし2018年度, 資源生たちは「やど祭」の御輿企画で優勝しました。多くの授業で忙しい合間を縫って素晴らしい成果を挙げたのです。彼らに「おみこし作りより数学を勉強せよ」とは言えないではないですか!! 短い青春を謳歌し, 将来の食と環境を担う, この異能の勇者たちには, それにふさわしい数学教育が必要です。

 本書は, 12年間をかけて資源生を観察し, 資源生が受けている他の授業の内容, 資源生の高校までの履修歴や受験科目, 資源生がよくやらかす間違いや勘違い, 資源生にウケるネタ, 資源生が抱く疑問や不満などを調べ上げて作りました。

 数学は, 自己完結した美しい理論体系です。しかしそれとは別に, 「資源生のための数学」があるのです。資源生が盛り上がるのは, 平均値の定理でもガウスの掃き出し法でもありません。生物の個体群動態を表すロジスティック方程式やロトカ・ヴォルテラ方程式, 森林の材積を見積るビッターリッヒ法の理論, 酵素反応速度を表すミカエリス・メンテン式, 食品の成分分析に必要なフーリエ解析や多変量統計と二次形式なのです。

 もちろん本書だけではそこまで行けませんが, そこまでの道のりを定め, 必要なら小中学校レベルまで戻り, 多少厳密性を犠牲にしてでも必要な内容(テーラー展開, オイラーの公式, 全微分, 重積分, 変数分離法, 線型空間, 数値解法, 対角化など)を短期間(週1コマx15回!!)で手際よくサクッと学べるように工夫しています。資源生以外の皆さんにも役立つと嬉しいです。ただし数学類や物理学類の人はこんなの読まないで, ちゃんとした本(ブルバキやJJサクライ?)を読んでください(笑)。