教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。(2017/10/10)

【本の情報】
『古代エジプトの数学 : 文明繁栄のアルゴリズム』David Reimer著, 富永星訳, 礒田正美監修.東京 : 丸善出版, 2017【分類410.242-R25】

【コメント】
本書は、David ReimerによるCount Like an Egyptianの邦訳です。訳者は珠玉の理系翻訳書を産出される富永星氏、礒田は自身の研究の一環として監修しました。古代エジプトの数学は、数学史研究上は20世紀冒頭の四半世紀までにその解読が完結し、早くから算数・数学教科書にも取り上げられてきました。その教材開発は、イスラエルのAbraham Arcavi (現、国際数学連合ICMI事務局長) 先生が1980年代に学位論文で手掛けた新展開により今日へと前進します。Arcavi先生の研究をふまえ、2002年には本学教育研究科で筆者のもとで岐阜県派遣の高橋秀樹先生がWebサイトと修士論文をまとめました。1998年にはじまる礒田とArcavi先生との研究交流は、第一級の国際誌Educational Studies in Mathematics (Springer)に、Learning to Listenという表題で成果を結びます(2007)。それら経験を前提に礒田は本書を監修しました。礒田は、他者の立場を想定する解釈学的な営みに基づく理解こそが、今日求められる資質・能力であることを提唱しています。その資質・能力を鍛える良書として本書を監修したことを序文に記しました。序文では、グローバル化への資質・能力育成に算数数学教育が必須であること、その教材書として古代エジプト数学を読み解く本書が評価されるべきであることを解説しています。
数学史上の原典を活用した教材開発に関わって20年、礒田が寄贈してきた貴重書は「数学の叡智」展(2015)にみるまでに充実しました。次世代を担う皆さんが、自身の世界展開の礎として、それら貴重書を活用下さることを願っています。

参照URL:
https://doi.org/10.1007/s10649-006-9075-8  [学外Webサイト]
http://math-info.criced.tsukuba.ac.jp/museum/RhindPapyrus/index.htm
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/exhibition/2015math/index.html