I. 青年時代

 中学時代に宇野は、友人の西雅雄からアナーキズムの洗礼を受け、大杉栄からサンディカリズムを知り、堺利彦・山川均から社会主義を教えられた。しかし、社会主義に大きな関心を寄せはじめるのは、高等学校に入ってからである。中学校、高等学校時代に親交を結んだ人々を、宇野は「思想上の友人」と呼んでその影響を認める。特に、山川は同郷の倉敷出身であり、西とともに学生時代何度か山川の家に出入りした。
 東京帝國大学に在籍中、宇野は、マルクスの『資本論』を通じて「経済学の理論的研究の意味」を認めるようになる。彼は、社会主義の思想や運動よりも、『資本論』を勉強することを望み、それを継続するために大原社会問題研究所に入った。しかし、そこでの調査活動等の仕事に見切りをつけ、『資本論』を勉強するためにドイツへ留学する。

1. 荒畑寒村編 『堺利彦全集』 全6巻,中央公論社,1933 (非売品)   所蔵情報
2. 『山川均全集』 2〜5巻,7巻,19巻,勁草書房,1966〜1968   所蔵情報
3. 大杉榮 『社會的個人主義』 新潮社,1915,初版
4. レーニン著 大山岩雄・西雅雄共譯 『ロシアにおける資本主義の發展』 上巻・下巻,岩波文庫,1936,初版   所蔵情報
5. カウツキー原著 『マルクス 資本論解説』 賣文社,1919,初版   所蔵情報
6. George Crabb, ENGLISH SYNONYMS EXPLAINED, Geroge Routledge & Sons, Limited, London. (出版年不明) ★
高梁中学在学中、校内数学コンクール銀メダル入賞の褒美に、寄宿舎の舎監から副賞としてもらった辞書。
7. Heinrich Heine, Buch der Lieder, Der Tempel Verlag, Leipzig. (出版年不明) ★
ドイツ留学当時、宇野の下宿先の主人、ストッシュ夫人から贈られたハイネの詩集。本の表紙見開きにストッシュ夫人のサインがある。チケットが5枚挟んである。
★印は宇野達二郎氏より借用しているもの
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