其の二十五 猿牽(猿曳・猿引,さるひき) 10人(猿10疋)

日光神領内の猿牽(猿廻し)が,実際にサルを1疋(匹)ずつ引き連れ,猿面(其の十)の後に供奉します。その頭(かしら)は小出金太夫(こいできんだゆう)で,倉ヶ崎村(くらがさきむら,栃木県日光市)を居所と記すものの,実際には日光例幣使道の栃木宿(栃木県栃木市)を居所としていました。また,実際には下野国喜連川藩領(栃木県さくら市)・常陸国(茨城県)水戸藩領・上野国(群馬県)前橋藩領の猿牽も供奉しました。猿牽のような芸能者は,不当にもしばしば差別の対象とされ,近世の身分制においては穢多頭の支配下とされていました。しかし東照宮祭礼に供奉する猿牽たちは,元禄年間(1688~1704)以降,しばしば東照宮祭礼への出仕を根拠に穢多頭の支配を拒絶します。東照宮祭礼に供奉することは,栄誉として,また,自らは他と異なる特別な身分にあることを主張する根拠ともされたのでした。ここに東照宮祭礼のご威光が垣間見えます。

なお,現在の千人行列には,日光市民の仮装による猿牽が供奉します。したがって,サルの姿はありません。(10月29日公開)