IV.教育学と家庭・学校・社会  ?ペスタロッチー・フィヒテ・フレーベル?

 ペスタロッチー(1746-1827)<表紙左下>は『隠者の夕暮』で、神が与える親子の関係を再確認して、それを「生活が陶冶する」教育論の基本にすえました。それはやがて、新たに到来する産業社会を見すえた新しい学校教育の模索へとつながります。その結晶である主著『ゲルトルート教授法』では、直観を手掛かりに、生活に必要な知識の基本形式としての数・形・語の陶冶へと展開され、道徳・宗教教育まで展望されてゆきます。

    
ペスタロッチーと子どもたち 19世紀当時の民衆学校
ペスタロッチーと子どもたち19世紀当時の民衆学校

 ペスタロッチーの教育実践とその思想は、ヨーロッパの各国に、様々なかたちで影響をもたらしました。ナポレオン戦争のときベルリンに在ったフィヒテ(1762-1814)は有名な『ドイツ国民に告ぐ』で、ペスタロッチーの教育実践にドイツ国民再生の手掛かりを求めています。

   主著の『人間の教育』で、子どもに宿る神性を信じ、それを引き出すことに教育の本質をみていたフレーベル(1782-1852)<表紙右下>は、ペスタロッチーを最も忠実に深化させた後継者といえます。彼のカイルハウの学園の呼称「キンダー・ガーテン」は、今日では「幼稚園」を表す普通名詞になっていますし、「恩物」の名称で知られる遊具も有名です。

 アメリカのオスウィゴウ経由のペスタロッチー主義は、明治初期の日本の教育にまで大きな影響を与えています。


フィヒテ 1810年創設当時のベルリン大学
フィヒテ1810年創設当時のベルリン大学
フレーベルの「恩物」(第一恩物とその使用例)フレーベルの「恩物」(第一恩物とその使用例)


[出展文献]

ペスタロッチ『ゲルトルート児童教授法』初版 1801年
Johann Heinrich Pestalozzi, Wie Gertrud ihre Kinder lehrt, 1.Aufl., 1801.
標題紙
フィヒテ『ドイツ国民に告ぐ』初版 1808年
Johann Gottlieb Fichte, Reden an die deutsche Nation, 1.Aufl., 1808.
標題紙
フレーベル『人間の教育』初版 1826年
Friedrich Wilhelm August Frobel, Die Menschenerziehung, die Erziehungs-, Unterrichts- und Lehrkunst, angestrebt in der allgemeinen deutschen Erziehungsanstalt zu Keilhau, 1.Aufl., 1826.
開いたところ 広島大学所蔵

IV?(2).講壇の教育学  ?ニーマイヤー、そしてヘルバルト?

ニーマイヤー

 ニーマイヤー(1754-1828)は、フランケの曾孫であり、啓蒙主義のもとで敬虔主義の精神を維持し、自らも曾祖父の設立した学院の経営にあたり、またハレ大学の神学教授でもあった。敬虔な家庭教育のもっている社会的な規定性を自覚し、実際社会に有用な市民形成を目指す教育学を構想していた主著の『基本諸原理』は多くの版を重ね、その影響は、遠戚にあたるヘルバルト派のライン(1847-1927)がその校訂版を出版するなど、19世紀の末にまで及んでいる。

 ヘルバルト(1776-1841)は、このニーマイヤーに高い評価を与えていた。ヘルバルトは、ペスタロッチーへのかかわりから、知を内容とし媒介とする教授の営みにいかに道徳形成的な訓育の契機をみいだすか、そこに、『一般教育学』、さらに『教育学講義綱要』の関心を集中させていた。

   啓蒙主義の国家的な要請によってトラップやカント(1724-1804)から始まり、ニーマイヤーやヘルバルトを経て、シュライエルマッハー(1768-1834)にいたる、人間論を基礎とした講壇教育学の系譜はここでいったん途絶え、19世紀の末には国民教育のシステムを視野においた新たな講壇の教育学が登場することになる。

ニーマイヤー


ヘルバルト 『一般教育学』初版
ヘルバルト『一般教育学』初版

[出展文献]
ゲディケ『教育書全集』 1789年
Friedrich Gedike, Gesammelte Schulschriften, 1789.
標題紙
ニーマイヤー『教師義務論』初版 1786年
August Hermann Niemeyer, Entwurf der wesentlichen Pflichten christlicher Lehrer nach den verschiednen Theilen ihres Amts, 1.Aufl., 1786.
標題紙
ニーマイヤー『基本諸原理』初版 1796年
August Hermann Niemeyer, Grundsatze der Erziehung und des Unterrichts, 1.Aufl., 1796.
開いたところ
ニーマイヤー『公的学校と教育施設について』初版 1799年
August Hermann Niemeyer, Ueber Oeffentliche Schulen und Erziehungsanstalten, 1.Aufl., 1799.
標題紙 九州大学所蔵
ペーリッツ『教育科学』 1806年
K. H. L. Politz, Die Erziehungswissenschaft, aus dem Zwecke der Menschheit und des Staates praktisch dargestelt, Bd.1, Bd.2, 1806.
標題紙
ヘルバルト『ペスタロッチの直観のABCの理念』初版 1804年
Johann Friedrich Herbart, Pestalozzi's Idee eines ABC der Anschauung, 1.Aufl., 1804.
標題紙
ヘルバルト『一般教育学』初版 1806年
Johann Friedrich Herbart, Allgemeine Padagogik, aus dem Zweck der Erziehung abgeleitet, 1.Aufl., 1806.
標題紙
ヘルバルト『教育学講義綱要』第2版 1841年
Johann Friedrich Herbart, Umriss padagogischer Vorlesungen, 2.Aufl., 1841.
Umriss padagogischer Vorlesungen標題紙 金子茂氏蔵本

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Last updated: 2016/07/19