III.教育学と自然・人間・社会  ?啓蒙主義・ルソー・フランス革命?

ラ・シャロッテ

 18世紀フランスを華やかに彩る思想家群は、ロックを受け継ぎ、自然を克服する人間の完成可能性と人類の進歩を確信していました。人間の精神形成における教育の力に深い信頼を寄せていたのです。感覚から正しい精神を導くような環境を用意すること、それが教育でした。ラ・シャロッテ(1701-85)の『国民教育論』、ミラボー(1749-91)の『公教育論』もその系譜にあったといえます。『人間論』のエルヴェシウス(1715-71)も、徹底した公教育論者でした。『百科全書』の編者ディドロ(1713-84)は、この思想家群のなかでは、傑出したオルガナイザーでした。

ラ・シャロッテ



フランス人権宣言

 ルソー(1712-78)<表紙右上>は古代ギリシアのポリス共同体に公教育のモデルを求めてはいましたが、『エミール』<頁右下>は家庭教育を中心とする内容になっています。ルソーは、『エミール』で、一人の金持ちの孤児を育て上げていく過程を描いてみせましたが、そこでは、啓蒙主義者たちが 克服すべきものと考えた「子ども期」をむしろ充実させることにより、理性をそなえた自立と連帯の人間、そしてやがて有徳な市民を用意できると確信していたのです。
 フランス革命の時期には、多くの公教育論や国民教育論がおおやけにされますが、いずれの場合にもルソーの影響は強く働いています。

フランス人権宣言



「ルソーと自然人」
「ルソーと自然人」
『エミール』初版
『エミール』初版

[出展文献]
ディドロ編『百科全書、あるいは学問、技術、工芸の理性的辞典』1751-80年
D.Diderot (et.), Encyclopedie, ou dictionnaire raisonne des sciences, des arts et des metiers, 1751-80.
開いた頁 p575 百科全書数冊
ルソー『エミール』初版 1762年
Jean-Jacques Rousseau, Emile, ou de l' education, 1.ed., 1762.
エミール数冊
ラ・シャロッテ『国民教育論』 1763年
Louis-Rene de Caradeuc de La Chalotais, Essais de l'education nationale, 1763.
開いた頁
ラ・シャロッテ著/シュレッツァー訳『教授試論』 独語訳 1771年
Louis-Rene de Caradeuc de La Chalotais, L. Schlotzer(ubersetzt), Versuch uber den Kinder- Unterricht, aus dem Franzosischen ubersetzt, 1771.
標題紙
フィラシエ『教育史辞典』 1784年
M. Fillassier, Dictionnaire historique d'education, Ou, sans donner de preceptes, on se propose d'exercer & d'enrichir toutes les facultes de l'ame & de l'esprit, en substituant les exemples aux maximes, les faits aux raisonnemens, la pratique a la theorie. Nouvelle edition. Tome premier, tome second, 1784.
標題紙 開いた頁
ミラボー『公教育論』 1791年
Mirabeau, Travail sur l'education publique, 1791.
開いた頁
タレーラン・ペリゴール『公教育について』 1791年
Charles Maurice de Talleyrand-Perigord, De l'instruction publique, 1791.
開いた頁

III?(2).『エミール』初版とその反響

 複雑な事情からフランスとオランダでほぼ同時に刊行された『エミール』の反響は大きく、フランスではすぐに発禁となったため、オランダ版が各地に流布した。イギリスでは翌年に翻訳がでたり、また隣国のドイツでも賞賛や批判がいりみだれたが、カンペ(1746-1818)編集の『教育総点検』に収められた全訳とそれに付された註は、ドイツ汎愛派のルソー受容として、注目されている。


フェーダー『新エミール』フェーダー『新エミール』

[出展文献]

ヌージェント訳『エミール』初版 1763年
Jean-Jacque Rousseau, Emilius; or, An essay on education, transl. Eng. by Nugent, vol.1-2, 1763.
標題紙 標題紙
フォルメイ『反エミール』初版 1763年
J. H. S. Formey, Anti-Emile, 1.ed., 1763.
標題紙
フェーダー『新エミール』初版 1768年
J. G. H. Feder, Der neue Emil oder von der Erziehung nach bewahrten Grundsatzen, 1.ed., 1768.
標題紙
クラーマー訳『エミール』(カンペ編『教育総点検』第12-14巻所収)
Jean-Jacque Rousseau, Emil oder uber Erziehung, Cramer(ubersetzt),in: Joachim Heinrich Campe (Hrsg.), Allgemeine Revision des gesamten Schul und Erziehungswesens von einer Gesellschaft praktischer Erzieher,12-14 Theile.
標題紙

パンフレット目次へ | 次へ
(c) 筑波大学教育学系、筑波大学附属図書館  voice@tulips.tsukuba.ac.jp
Last updated: 2016/07/19