ご挨拶

■附属図書館長ご挨拶

 附属図書館は、これまで学内組織の協力を得つつ、本学が所蔵する貴重資料などを広く公開する展示事業を行ってまいりました。一昨年度は「数学の叡智 - その探求と発展 - 」と題した理数系領域初の展示、昨年度は「歴史家 二宮宏之の書棚」と題した歴史家の旧蔵書の展示と、毎年様々なテーマで特別展を開催し、好評を博しています。

 今回の特別展は、図書館情報メディア系綿抜豊昭教授のご指導のもとに、附属図書館と図書館情報メディア系との共催により、「江戸の遊び心 - 歌川国貞の描く源氏物語の世界 - 」と題して、「紫式部源氏かるた」を中心に各種資料を紹介することになりました。

 「源氏物語」は、「桐壺」や「葵」といった巻名・内容はもちろん、作者の紫式部、主人公の光源氏などが、広く知られている作品です。本特別展では綿抜教授を中心に3名の先生方に様々な視点から「源氏物語」について解説していただきました。第1部は本学に所蔵する「源氏物語」の貴重書を中心に「源氏物語」との出会いについて、第2部は「源氏物語」が世の中にどのように知識化されたかについて、第3部は作者の紫式部像について、第4部は「源氏物語」をビジュアル化した「源氏絵」について、そして、第5部では最新のデシタル技術と貴重資料が融合した浮世絵鑑賞システムについて、それぞれ紹介いたします。

 各部での展示資料は、書物としての「源氏物語」から浮世絵の「紫式部源氏かるた」まで多岐にわたり、様々な形で表現された、豊かな「源氏物語」の世界を知ることができることと思います。図録には本学芸術専攻の院生によるコラムも寄稿されており、図書館情報メディア系、人文社会系、芸術系と文理にまたがる様々な研究領域から、その成果を共に公開できるのは、総合大学としての筑波大学ならではのことであり、その基盤として常に異分野間の交流が盛んに行われていることが理解されると思います。皆さまには、展示される資料にさまざまな興味・関心をお寄せいただき、「源氏物語」の新たな世界を発見されることを期待しています。

 附属図書館特別展は、本学に蓄積された豊かな「知」を積極的に内外に向けて発信する、という附属図書館の取り組みの一つです。是非とも、多くの方々に、ご高覧いただければ幸いと考えております。

     
平成29年秋
附属図書館長 西川 博昭


■図書館情報メディア系長ご挨拶

   附属図書館と図書館情報メディア系の共催で、特別展「江戸の遊び心 - 歌川国貞の描く源氏物語の世界 - 」を催すこととなりました。二代目歌川国貞は梅蝶楼国貞とも呼ばれ、後に四代目歌川豊国を襲名した幕末から明治期にかけて活躍した絵師ですが、数多くの源氏絵を残しています。本特別展では本学が所有する国貞の「紫式部源氏かるた」を中心に、他の浮世絵師の源氏絵なども参考として展示しております。

 また、10月28日(土)には、図書館情報メディア系 綿抜豊昭教授による講演会や展示室でのギャラリートークも開かれます。講演等を聞いた後で、再度作品を見直しますと、また違った鑑賞を楽しめるのではないかと思われますので、ぜひ足をお運びください。

 つい最近、偶然にも現代語に翻訳(翻案)した源氏物語を読む機会がございました。オリジナルをきちんと読んだわけではないので、どの程度、原作に忠実なのかはわかりませんが、現代でもその面白さは色あせないストーリー性を持っているように思われます。ごく普通の文庫本の小説なのですが、挿絵も多く入っています。多分若い人たちに受けるための趣向かと思われますが、その挿絵が現代的なマンガになっていました。私のような年配の者には、源氏物語と少女マンガ風の挿絵が、必ずしもしっくり来るわけではないのですが、若い世代には、何の抵抗もなく入っていくのかもしれません。多分それと同じ発想かもしれませんが、今回展示されている、浮世絵による源氏絵も当時としては現在のマンガと同じように、難しい文学を広く庶民に浸透させるための役割を担っていたのかもしれません。

 さて、今回の展示では、源氏絵をディジタル化し、kinectという道具を使って、鑑賞者の動きをPCに取り込み、それに合わせてインタラクティブに鑑賞するという試みも行なっております。いくつかのテーマの中から興味あるテーマを選んでいただくと、それに対応した解説が提示されたり、また源氏絵に動きを加えることで、浮世絵の世界に少しでも入り込む感覚を味わっていただけるのではないかとのことです。

 源氏物語のストーリーをご存知の方は、場面を想像しながら、また、ストーリーを詳しく知らない方でも、十分に楽しんでいただけるものと思っております。

平成29年秋
図書館情報メディア系長 松本 紳